蹴馬鹿の窓 NO.2〜13

NO.2『とっちらかりオヤジ現る』 2004.1.12



コンサドーレが誕生して 早や8年。
その間 ホームゲームのほとんどを スタジアムかTVで見ていた
スタジアムへ足を運ぶ場合 前売りでチケットを買う というのを繰り返していたのだが
それが'97の半ば頃から だんだんと困難になり とりわけ'01のドーム元年には
前売り2時間完売!ダフ屋まで登場する!と言う 高騰ぶりを見せた。
'99・00は「超個人的感情の問題(この件はいつか話します)」により
スタジアムへは行かずTVのみの観戦で '01の後半からようやく気を取り直し
「後期のみのSS指定席シーズンチケット」なるものを購入した
その翌年は最初からシーチケになったのだが これ なかなかどうして ツワモノだった。

2人で10万を越える金額 どこの席に当たるか分らない指定席
しかも1年間だから買った時は 行けるかどうかも定かでない リスクのあるチケットだ
さらに数試合行って分かった事がある 周りが全てシーズンチケットの人たちなのだ。

「ご近所さん」 顔はよく見てないが 声と叫ぶ内容で分かった
サッカーを見ていると どうしても力が入る 声も出る
ゴールをしたら喜びの 危険な時には励ましの叫びが出る
せっかくスタジアムまで来たのだから 声だけでも試合に参加すべきである
シーズン当初はSS席の皆様はわりと静かに観戦しておられた が数試合たつにつれ
チームの不甲斐ない戦いに SS達も声が出始める 「がんばれー負けるなー」「集中!」
しかしシーズンも終盤を迎える頃には 「テメーラ!なにやってんだー!コラー!」に変わった

なかでもチャンピオン級のオヤジがいる その怒り方たるや凄まじい
席は3つ隣で すぐ近くなのに 何を言ってるか分からない しかも試合開始直後からだ
キックオフから3分もたたずに 「コラー!」となる 「なにもこんな早くから・・」と思うが
オヤジの戦闘態勢は完全に整っている もう誰にも止めることは出来ない。
試合が進むにつれ オヤジはますますヒートアップする なにか言葉を発するたびに
体が前後に揺れる ツバは飛び 目は血走り 血圧は200ぐらいまでアップしている
相手選手・審判・コンサの選手 オヤジの牙は全てに向けられた。
ハーフタイム オヤジは必ずトイレに行く 僅かな時間だトイレは混む オヤジは走る
ここでも戦闘はやめない 誰よりも早く辿り着くため 人を掻き分け 走る 登る 走る
席に戻り 落ち着きを取り戻したかに思うが 後半開始後もすぐキレる やはり早い。
見事なカウンターだ そのスピードたるや選手も見習ってほしいものだ
血圧もあっという間に元の200へ 全身の細胞は一気に覚醒する
残り時間はあと僅か 相手に猛攻を受ける 下がって守る が 足は止まる 危ない!
「オラー××◎!動けーって×◎○▲!止まんなー×◎○▲って 言ってるべ!コノっ!」
相手にゴールを決められる オヤジの怒りは頂点へ達する
「○▲×▽×××◎○▲▽××◎○▲×▽××◎!!!って!!!!!」
やはり何を叫んでいるのか分からない 言葉になってないのにもホドがある。
分かるのは言葉の最後に「って」つくことだけだ 何を言っているのか聞いてみたいが 怖い。そ
して試合終了とともに オヤジは風のように会場から消える

ひとつ気になることがある。
いつもは息子と来るのだが 時々会社の同僚らしき人と 来ることもある
それも違う人を入れ替わり連れてきていた その人たちに聞いてみたい
この父と この同僚と サッカーを見に行くことを どう思っているのか
家で息子に避けられてはいないだろうか 会社の同僚の笑顔はギコチナクなってないか
そんな心配をよそに オヤジはまた誰かを連れてやってくる 静かに 胸には闘志を秘め
ここが ここだけが私の全て捧げる場所 とでも言うように…
私たちは尊敬の意味をこめて オヤジをこう呼ぶ ――――"とっちらかりオヤジ"と。


NO.3 『柳下新監督会見にて』 2004.1.17


1月16日 柳下新監督の記者会見がありました。
以下がそのコメントです。

チームのコンセプトとして、攻守ともに自分達で動き出してプレーすること。
常に自分達が主導権を握ってゲームをコントロール出来るようなサッカーをしていくこと。そうい
ったアグレッシブなサッカーをしていきたいと思っています。

1.90分間高い集中力を持ちプレーしていくこと。
2.攻守の切り替えを早く、相手よりも良いポジションを取ること。
3.バランスの取れたポジションを取ること。
4.流れを読んでリズムを変えていくこと。
5.ミスを恐れず積極的にプレーすること。
以上、5つを選手達へ伝えていきたいと思います。


ようやく新監督の元 具体的な指針が発表になりました。
会見自体は見てないのですが 上記の内容を読む限り
「ジュビロ・スタイルを目指す」と言った印象を受けます。
去年のジョアン・カルロス氏も"ボール支配率を高く保つ アクションサッカーをする"
と言う点では 基軸は同じなのですが 個人を主体とするか 組織を主体とするか の
差は両氏の間で感じられます。
ただ 昨季の失敗は 個人主体である 肝心の外国人がリタイヤした事
準備期間が足りなくチームが未成熟だった事 などが挙げられ
「1年でJ1復帰」と言う目標が かえって足を引く形になりました。

では 今年の場合上手く行くのか?と言った疑問が生れるのですが
HFCが真先に挙げた 「5段階計画 長期的な視野に立ったチーム作り」が
昨季と違う時間的余裕を与えます
だからこそ一緒に成長できる 柳下氏へオファーを出したのでしょう。

柳下監督が挙げた5つのポイントの内 2・3の"ポジショニング"が目を引きます
今までは 攻撃を受けると下がり過ぎたり 左右に片寄り過ぎたりと
"ボールサイドに寄りがちだったバランスを変える"と言う 意思が感じられます
コート全体を満遍なく使う バランスの良いポジショニング
まさにジュビロ・サッカーの優れたところ。
これが上手く出来るようになれば 格段にサッカーの質が上がります。



ただ心配なのは 選手層で ジュビロには「名波」がいること。
ちょうど"やじろべえ"言う中心点に「名波」を置くのが ジュビロの「Nシステム」。
彼を中心にDF・ボランチ・両サイドがバランスを取り 攻撃へと繋げる
そうした基礎がジュビロにはあります。

翻って 現在のコンサドーレに 中心点となり得る選手はいるのでしょうか
残念ながら 名波のような鳥瞰的視野を持った選手は 今のところ実在しません
個人的には 鈴木(智)の数年後に期待する と言ったところです。
バランスを取る そのためには中心点を決める これが課題になるのだと思います。

後は守備組織の有り方を 作り上げる事。
誰がボールへ行くのか 誰がパスコースを塞ぐのか 誰がスペースをケアするのか
全てはケース・バイ・ケースですが 選手個人の判断力を上げる事が必要です
柳下監督が1番労力を使う作業ではないでしょうか。

そして5番目に書かれてる"ミスを恐れず積極的にプレーすること"。
これは若手に向けられた言葉なのだと思います。
プロの壁にぶち当たり プレーが萎縮してしまう事がよくあるのですが
若手主体となった新生コンサドーレには とても大切な言葉だと思います
昨季よりもさらに厳しい戦いが予想される今季 監督からの指針として
"常にチャレンジ"があれば きっと選手たちも勇気づけられる事でしょう。

ベテランと若手を入れ替え 外国人なし 補強なしと かつてないほどの
刷新に取り組んだフロント 失敗は許されない路線変更です。
新監督には重責が掛かりますが まっさらな分 やり甲斐もあるでしょう
自分の手で1歩1歩最長させる ジュビロとはまた違った感触があると思います。

以上が監督会見のコメントを読んだ雑感なのですが
目指すべき地点と 現地点ではかなりな開きがあります
これから時間をかけ 確実に作り上げてほしいと願うばかりです。
そしてHFCも新監督もサポーターも 同じ歩幅で成長して行ければと。


NO.4  『恐怖の3日間』

このお話しは いずれ皆さまに話さなければならなかったこと。
私たちが体験した あの血も凍るような戦慄の3日間を。

その恐怖は1本のメールから始まった
"S く た ろ う 氏 札 幌 入 り し ま し た"
11月13日 木曜 深夜10時 友人Rンバ氏からのメール。
「 来 た … 」 
咄嗟に私は 扉という扉 窓という窓 全てに鍵を掛け 換気口さえ塞いだ。
なんぴとたりとも入れぬよう厳重に塞ぎ 灯りを消し 
右手に孫の手 左手には懐中電灯を携え 布団に潜り込んだ。
「どうしたの?」 妻が言う 危険を伝えようとするが 上手く言葉にならない
紙に書く が 手が震える しかしこの危険を早く妻にも伝えなければ
"熊 猛獣 きけん 気をつけろ"何とか書いた"危険"が漢字で書けなかった
その時 「ギャオ!!」 獣の鳴き叫ぶ声が! 瞬間 私は気を失った 猫だった。

明けて翌日。14日金曜 秋晴れの空。
いつもなら打ち合わせに外出するのだが それは無理だ。熊牧場の檻に入る勇気はない。
TVのニュース速報が流れないかと気になる きっと街は警報が鳴り響いているだろう。
幸い妻も無事に帰ってきた。しかし今夜も厳重な警備は怠れない。
午後8時 Rンバ氏からメールが入った 明日の予定について
"Sくたろう氏と11時に宮の沢行きます そこで会いましょう"
とうとう観念する時が来たようだ。猛獣との対決 私の命はいかに…
まんじりともせず 夜は更けていった。

そして運命の日。15日 土曜 昨日にも増して 空は晴れ渡っている。
完全な寝不足だ いや 寝ていない。全身ビスケットで熊牧場に入る そんな気持ちだ。
なにか武器になるような物はないかと探す だが猟銃などあるわけはない
もう全てをあきらめて 丸腰のまま家を出た 愛猫のミイと別れの挨拶をした。少し泣いた。
車に乗り 宮の沢へ向う 運命の時は近づく。ファクトリーが見えてきた 
さあ どうなるkazua! 猛獣との対決は!その命は!衝撃の事実はCMの後!

青春にオ〜レ〜♪  し ろ い こ い び と 〜 ♪

猛獣は突然立ち上がり こちらに向ってきた! 危ない! 思わず妻の後ろへ隠れる!
「はじめまして Sくたろうです いつも ありがとう ございます」
初めて交わした言葉だった 意外と爽やかな髭熊だった。
だが 油断はならない いつガブリと来るか知れない 出来るだけ妻を間に置く
とにかく彼の空腹が1番危険だ さり気なく危険を回避する作戦に出た。
k:「なにか食べましょうか?」 S:「そうですね」
彼は作戦に乗った 安堵の汗が流れる そのまま「梟巣(宮の沢内飲食店)」に入った
店に入るやいなや 彼は「1番でっかいヤツを 」。カレーが来た 全部食った。
豪快な食べっぷりを見つつも 私は食欲もなく 妻と2人で リブサンド1つ。
だが これで一安心。「あ〜食った」と満腹感を露にしながらも 目は次の獲物を探してた
「おっ」と言いながら デジカメを構え 次に狙ったのが 張さん。
練習を終えた選手に変わり グランドを黙々と走り続けている張さん
それを撮り出した 狙われたのが写真で良かった メシ前なら命すら危うかったはず。
その後 コンサドーレ札幌・コレクションハウス見て廻る
館内のモニターには'97シーズンのVTRが流れる 獣の目はキラキラと輝いていた
グッズショップではジャディウソンの選手カードを見つけ喜ぶ マニアなようだ。
その後4人は一旦解散した。満腹の猛獣とRンバ氏は共に行動するようだった。

家へ着き 真先に鏡で確認した 手は 足は 耳は 全て無事だった 奇跡だ。
がしかし まだ夜がある そう 彼らと 晩飯を食う約束したのだ。
場所は 私たちが最近よく行く店。一応 予約の連絡を入れてみた 
が ここで大変な事態に。予約が埋まってるそうだ これはマズい。彼の逆鱗に触れる
"今度こそ食われる" そう覚悟をし Rンバ氏に変更の連絡を入れた。
「そうですか 分りました じゃ他の店に」 Rンバ氏は 我々に気遣い そう言ってくれた
すまない。私のミスで 君を危険な目に合わせる事に…。頼む 生きていてくれ。

午後6時。店近くのローソンで待ち合わせた。辺りは薄暗く 風が冷たかった
彼を待たせるわけにはいかない 20分早く着いた Rンバ氏は無事だろうか。
その時 闇の向うから地響きを立て 獣が来た。 逃げるか いや もう逃げられない
「どうも〜」 にこやかに獣は笑う その横にはRンバ氏がいた よかった無事だった。
さすがだ あの獣をなだめるとは 彼がサーカス団員なら 一流の猛獣使いだ。
そうこうしながら 4人は店へと入った。「いらっしゃい…ま……せ」店員が引いた
気持ちは分かる だが彼らもプロだ 身の危険をさらしながらも オーダーを取りに来た
「取りあえず……全部」 獣は一言でオーダーを終えた。
次から次へと料理は運ばれる が 全てテーブルへ置かれる前に無くなる
それもそうだ 運ばれた皿を奪い そのまま口へ運ぶ その繰り返しだ。
いや それでいい 命の危険を考えるなら 食べ尽くしてくれた方が。食欲もない。

突然 獣が言う「おい Rンバ Sのかいを呼べ 俺様が来てる と言え」
次の犠牲者は決まった。 Rンバ氏が慌てて携帯を取り出す
その間 「CDを買った 真栄のコーチャンフォーってトコで」などと話していた
そう言えば 夕方 向うでサイレンが鳴り響いてたような。
R:「Sのかいさん 今 奥さんと食事に出てるようで それでも 来ますって…」
獣は"フム"とうなずいた。Sのかい氏 来ても危険だが 来なければもっと危険。
さすが道産子だ 身の危険は自然と感じ取ってるようだ。

程なくして Sのかい氏夫妻が来た 獣の真正面に座る この距離なら一発ではやられない
さすが ここでも道産子の勘は生きる がしかし こっちはさらに距離が縮まった
それも仕方がない 私は今日何人もの人を危険にさらしてきた これも定めだ。
R:「Sのかいさん 何か食べない?」 SK:「いえ 今 食べてきたんで」
食欲がないのだろう 分る。私はこの2日間 まるまる無しだ。

S:「ところでkazuaよ オメェの家の裏が中学校のグラウンドだと?」
そんな言い出しから始まった会話 
k:「ええ そうです そこの中学校のサッカー部 なかなかイイんですよ」
S:「なら ソコの応援記みたいなの書け そう言うページ作ってやるから なっ」
k:「えっ 中学サッカ−って みんな 興味あります?」
皆:「………」
そんな 居酒屋での他愛のない話し のはずだった。それがコレ「蹴馬鹿の窓」になるとは。

店の冷蔵庫が空っぽになった ビールサーバーも空だ。食い尽くした。飲み尽くした。
"閉店"の掛札と共に店を出た。Sのかい氏夫妻は明日のため その場を後にした

k:「この後 どうします?」「歌うぞ」獣の一言で Rンバ氏は近くのカラオケ屋まで走る
「いらっしゃい…ま……せ」 やはり店員は引く 「何時間のご利用で…」恐々聞く
「バッカ野郎!カラオケって言えば 2時間に決まってるだろうが!」
さすが獣だ 理不尽なことを言う。「そうでした…」店員も適当な応えだ。
部屋に入るや歌う。デカイ。声がデカイ。マイクは必要ない。凄まじい音量だ。
が ここで急に私の対抗心がメラメラと炎を立てた 負けたくない。
声の大きさではない 歌の上手さでもない "勢いだ" それだけは負けられない。
ありったけの力を振り絞った 獣も叫ぶ Rンバも踊る いや踊らない。
2時間はあっという間に過ぎた 各自 己の道を貫いた。
交わってないようで交わってる 不思議な2時間だった。恐怖心さえなくなっていた。
店を出 Sくたろう氏 Rンバ氏と別れた。明日の約束をして。
明日 そう明日が本番。コンサドーレの道内最終戦だ。10時・ドームの約束をした。

帰る道すがら 私は反省した。彼は獣なんかじゃない。
至って人柄のよい 優しく大らかな男だ。今まですまなかった 私の誤解だったようだ。
家に着き その日はよく眠った。もう闇を恐れる事はなかった。

11月16日 日曜 今日も晴れ。いよいよ試合当日。
午前10時過ぎ 家を出て路線バスでドームへ向う みんなもう着いてるだろうか。
現地では Sのかいさんグループと 合流する予定だ。
少し遅れたが大丈夫だろう もう獣の恐怖に脅える必要はない 彼はいい人だから。

が 現地 階段の踊り場付近に 獣はいた!

目を真っ赤に充血させ 片手には缶ビール こちらを睨んでいる。今度こそ本当に危険だ 
いや周りには人が大勢いる 誰かが助けてくれるだろう 妻を盾に階段を降りる 
「おはようございます」 出来るだけ大きな声で挨拶し 自分の存在をアピールした
これで私が危うくなったら 誰かが気づくだろう。
またも緊張感に包まれながら じっと開場を待った。
その間 Sのかい氏たちと挨拶を交わす 皆 穏やかないい人たちだ。
「う〜」 獣が唸っている「飲みすぎた」どうやら二日酔いのようだ 弱っている。

いよいよ開場。皆 場所取りに急ぐ 弱った獣と恐怖心で一杯の我々はゆっくり向う
ホーム側か アウェイ側か 迷った末 Sのかいさんたちと共にする事に決めた
席につき 真先にRンバ氏が弁当を買いに行った 当然 獣の分も。
弱っていても腹は減ってたらしい 危なかった。食い終わるまで近づくのはよそう。
弁当を食い終え 私に向かい「おい タバコ 行くぞ」と言った
首根っこを掴まれ そのまま喫煙所まで連れて行かれた 誰も助けてはくれなかった
「見張りしますか?」と言ってみたかったが シャレが通じなかった時は命取りだ 止めた。

席へ戻り いよいよ試合開始。獣は雄叫びを上げる。会場に響き渡る。
開始10分 珍しく早々と アンドラが先制。「ウォォ」 喜びの雄叫びだ。
前半28分 同点にされる。「グルルル」唸っている コレはマズい 選手たちが危険だ。
前半34分 砂川決める 2−1。「グワァグワァァ」 良かった喜んでいる 選手も一安心だ。
ハーフタイム。獣の双眼鏡は岡田を捉える「グルグルル」彼が出てない事に不満なようだ
妻がプレゼントで曽田のサイン色紙を当てた 獣の目が光る。ダメだこれは我が家の家宝だ。
後半49分 曽田が決めた 3−1。「ウォウォォ!」巨体を揺らす ドームも揺れる。
待望の岡田in。「ガォガァガァ!!」ご機嫌は絶好調に向う。
ロスタイム 相川→新居 4−1。「グォーグァグォーグェ…」泣いているのか…。
そして 終了の笛が鳴った。

良かった。本当に良かった。勝てて良かった。
もしもこの試合 負けるようなことがあったなら 選手たちの身に何が起こっただろう
いや 危険だったのは選手だけではない この札幌の町が破壊されたかもしれない。
その時は真先にこの身を捧げる覚悟は出来ていた。助かった。
だからこそ この試合の勝利を心から喜びたい。120万人を救った11人の戦士たちと共に。

そして この試合終了と共に 彼の「札幌出張」は終わる。別れの時は近づいた。
思えば この3日間 常に危険と隣り合わせだった。私はホトホトに疲れた。
しかし よくよく考えてみると それは全て思い過ごしのようだ。
私の前では けして人を襲ったりはしなかった。言葉使いも丁寧だった。
なぜ 彼を「獣」と思ってしまったんだろう 今となっては後悔するばかりだ。

ドームを出て 信号の所。
「 ありがとう ございました 」 彼は礼を言い ここで別れることを告げた
まだまだ一緒に居たかったが 飛行機の時間が迫っていた。
Sくたろう氏 Rンバ氏は福住方面へ 我々は白石方面へ。歩き出した。
振り返ってみると その後姿は 大きく 優しかった。
「また 来ます」 そう言葉を残し 人ごみの喧騒へ消えた。

3月 もしかしたら 札幌は また…。


このお話しは実際にあった出来事を元に 僅かな脚色で書かれております。
なお 文中の登場人物は全て仮名で さくたろうさん・ルンバさん・しのかいさんとは
なんら関係のないものです。ご了承下さいませ。


NO.5 「蹴馬鹿の主役たち。〜今の子らの側面〜」2004.1.31

ウチの窓から某中学サッカー部を見るようになって 早や4年。
始めの内は「あぁサッカー部が練習してるなぁ」ぐらいの見方だったんですが
練習試合や大会当番校となる試合を見るうち だんだんと応援に力が入り
今や すっかり「蹴馬鹿の窓」の主役たちになりました。

チームの特徴は3-5-2のシステムで 両MFの攻撃力を基軸に スピードタイプのFW
DFの真ん中には 1番技術の高い選手をリベロに据える というチームスタイル。
毎年選手が変わっても このチームスタイルは変わらず受け継がれてるようです。
ただこのチームよそと ちょっと違うところがありまして

それは "監督がいない"こと。

"いない"と言うと語弊があるのですが"普段の練習には顔出さない"んです
試合の時は当然来ますが 指示を与える事もなく ただベンチに座ったまま
それでもチームは割と強く 特にホーム(このグラウンド)でやる試合は ほとんど勝ちます
まぁこの辺が 私のハートをガッチリ鷲掴みする 要因でもあるのですが。
ただ13〜15歳の彼ら"小うるさい"のが居ないのは どれだけ自由な羽を伸ばしてる事か。

昨秋にも4チームが集まって練習試合をやっていたのですが
こういった比較対照があると このチーム 実に自由奔放なのがよく分ります。
例えば 試合前のウォームアップも 他チームだと厳しい監督の元 キッチリ丹念に
掛け声なんかも大きく揃っていて それでも鬼監督の厳しい声は響きます。
一方 我が某中学チーム。まず キッチリ集まる事はない。
なんとな〜く集まっては なんとな〜くウォームアップが始まる それもシュート練習
ランニングとか柔軟は一切しない。試合前だけでも相当な違いがあります。
で 肝心の試合中は 出ている選手は置いといて 出ていない選手たち。
他チームは鬼監督から「コラッ!そこ 寄せが甘いから抜かれるんだ!」など ご指導が入り
控えの選手たちも 体育座りのまま じっと試合を見守ります。
こちらの控え選手たちは アチコチに散らばり ボールで遊ぶか 喋っているか
監督もまったく気に止めてない むしろ選手たちと笑って話してる方が多いのです。
こういうのを側から見てると"これで いいんだろか…"と疑問が湧くのですが
その答えは 試合に出ている選手たちが 教えてくれます。

普段の練習から自分たちで考え 自分たちで取り組んでいるのですから
試合も同様 自分たちで考え 修正し 流れを作っていく 例え劣勢になっても不安げな顔で
監督を見ることはありません どうしても点が欲しいのなら リベロ君が上がって行く
ファールを誘い セットプレーに持って行く こういった事を自主的にやるのです。
また両サイドの上がるタイミングを見ても 躊躇う事もなく"ここ"と思った瞬間には
すでに動き出して チャンスを作ります。
そんな彼らのプレーを見て いつも感心するのは"萎縮しない"ということ。
常に伸び伸びと 自分の持てる力を発揮している そう感じます。
もしもこれが監督の狙いなら"このオッサン なかなかやるな"じゃないでしょうか。

部活が教育の一環なら 生徒の自主性は間違いなく育てられています。
それは 春先の新チームと初秋のチームの差に現れていて
あの練習方法で これと言った指導もなく キッチリと仕上がっていくチーム
その過程を垣間見続けているから よく分るのです。
No1を狙うなら 厳しい指導の元に鍛えられる事が必要です
そうすればこのチームは もっともっと上を目指せるのかもしれません
ただ こうして自分たちの工夫で 育っていく姿を見ると 「これも アリだな」と感じます。
後は回りの大人たちが 上手く導いてやれれば それだけでいいんじゃないか と。

もうひとつ ここの選手たちに感心するのは サッカーを楽しんでいること。
土・日など早く練習が終わった後など また自転車で集まっては ボールを蹴っている
試合の後も一旦着替えて また来る。夏休みなんかも同じ。
彼らにとって 遊びも部活も 同じサッカーなんです。
抑えつけられ 決められた枠の中で やっているのではなく 自分たちが楽しむために
そう 映ります 簡単なようで 実は難しいことじゃないでしょうか。
私も部活はやっていましたが 果たして彼らのように楽しんでいただろうか?
今となっては 疑問が残ります。まぁ「休むな!水飲むな!」の時代でしたから。
そう言う意味では 彼らを羨ましく思いますし なお更 応援する気持ちにさせてくれます。

見始めた当初は「なんだ 甘い練習してるな」と思って見ていたのですが
多少甘くても 自律の中で 伸びて行く それが彼らの側面でもあると思うのです。
3年間 この"サッカー部で培った何か"は きっと役に立つでしょう。そう思えます。


もうすぐ卒業式 去年の子らは巣立ち 新しい選手が雪解けと共にグラウンドに現れます。
今年は どんなチームになるのか。リベロは?両MFは?FWは?楽しみです。
自主性を重んじ 規律に縛られる事なく その羽を目一杯に広げた姿を見せてください。
それを「蹴馬鹿の窓」から 応援し続けています。

いや 今年は ポカリの差し入れしよう。


NO.6 さっぽろ むかしばなし。
     〜海を越えて来た 猛者たち〜

ぼ〜や〜 よいこだ ねんねしな〜♪ い〜まも むかしも かわりなく〜♪

むかし むかし あるところに おじいさんとおばあさんが おりました
2人の暮らしは とても貧しく 辺りの木々には実もならず 川で魚も獲れません
困った2人は 北の山へ移り住むことに 決めました。

ようやく辿り着いた北の山。
2人は自分たちの住む 居をかまえ 辺りの様子をうかがうと
木々には枝いっぱいに実がなり 川にはたくさんの魚が泳いでいました
「これは いいところへ来た」
おじいさんも おばあさんも この場所を とてもとても 気に入りました。

ある日のこと。おじいさんが山で芝刈りをしていると
1本の白樺がピカピカと輝いているではありませんか そぉーっと白樺を切ってみると
中から ハンサムで スマートで くるくるパーマの ダンディさん出て来ました
驚いたおじいさんは ダンディさんを 急いで家まで連れて帰りました。
そのころ おばあさんは 川で洗濯をしていました
ジャブジャブ ジャブジャブ 冷たい川で洗濯をしていると
なにやら 上の方から スイスイと流れてくるではありませんか
よーく目を凝らして見てみると なんと それは ハゲガッパ
腰を抜かすほどビックリした おばあさんは 一目散に逃げました
しかし ハゲガッパは おばあさんの後をついてくる 逃げても逃げても ついてくる
とうとう 山の家までハゲガッパは ついて来てしまいました
「やれやれ じゃぁ お入りなさい」
おばあさんは やさしくハゲガッパを 招き入れました。

こうして おじいさん おばあさん ダンディさん ハゲガッパの4人は暮らし始めました
ダンディさんは よく働き おじいさんとおばあさんを とても愛してくれました
一方 ハゲガッパはまったく働こうとせず 一日中ゴロゴロしては
「腹へった 足痛い 寒い メシまずい ワタシ都ジャ人気モノネ」などと もんくばかり
その度に おじいさんは町へ買い物に行き 食べ物や洋服を買い与えました
それでもハゲガッパは不満なようで 「バカ!」と一言だけ残し 川へ帰って行きました 

それからは3人で仲良く暮らしていましたが 北の冬は厳しく じっと春の訪れを待ちました
ようやく雪も溶け またおじいさんとダンディさんは山へ おばあさんは川へと行きました
ある日のこと。おじいさんとダンディさんが林に行くと なにやら動物がいます
ガサガサ ガサガサ 草の間で何か動いています 2人がそお〜っと近づくと
「グァオォ」 いきなり 黒豹が飛びかかって来ました おじいさんが危ない!
すかさずダンディさんが 黒豹をつかみ「デヤァ」っと投げ飛ばしました
ダンディさんは強い!さすがの黒豹も ダンディさんの前では おとなしくなりました
そのころ おばあさんは やっぱり川で洗濯。貧しくてもきれい好きな3人です
ジャブジャブ すると上から 大きな夕張メロンが ドンブラコドンブラコと流れてきます
おばあさんは 大喜びで夕張メロン持ち帰り 3人で食べようと思いました
すると そこには おじいさん ダンディさんのほかに 黒豹さんも
「少し減るけども まぁ 4人で 仲良く食べましょう」と さっそく夕張メロンを割りました
ザクッ パカッ すると中からは 小さな小さな メロンの種ほどのお猿が出て来ました
お猿はメロンの中で 果肉を全部食べていてしまい 中身は空っぽです
4人はガッカリしましたが お猿の可愛さにめんじて 一緒に暮らすことにしました。

こうして おじいさん おばあさん ダンディさん 黒豹さん お猿さんの5人は
仲良く暮らし始めました とくに 黒豹とお猿は とても仲良しで いつも一緒でした
大家族になり 1年中にぎやかで とてもとても幸せな暮らしでした。が
おばあさんには ひとつ悩みがありました。
それは出費がかさむこと。食べ物や衣料 それに電気・ガス・水道・住宅ローン・携帯他通信料
「あ〜なんで こんなに掛かるんだ・だ・だぁ!」
おばあさんは夜 ひとりで"キーッ"となることも しばしばでした。
そんな おばあさんの悩みをよそに おじいさんは夢を語ります
「もっとデッカイ お城のような家を建てて もっと美味しいものを食べて…
そうだ今度は 海の向うの王子様を呼ぼう 金髪の王子様 うん 金髪はええのぅ 金髪は…」

おじいさんの夢とは裏腹に 5人の暮らしは貧しくなるばかり
食べ物もほとんどなくなりかけ たまりかねた お猿さんは言いました
「ぼくは 鬼退治に行きます ぼくの分をみんなで食べてください」
おじいさんはウンとうなずき おばあさんはお猿のやさしい心遣いに涙しました
「お猿が いなくなるなら オレも旅に出る」 黒豹も言いました
困った時にはいつも助けてくれた黒豹さん。おじいさんもおばあさんも泣きました
そして 最後に ダンディさんが 重い口を開きます
「実はワタシ…おじいさんより 2つ年上なんです…」
なんとダンディさんは この家の最高齢。にもかかわらず あれほど働いてくれたかと思うと
おじいさんも おばあさんも なんと感謝してよいやら 申し訳ないやらで
2人とも大声で泣きました 足をバタバタさせて泣きました。
おばあさんは みんなに"白い恋人とサッポロクラシック"を持たせ
「お腹が空いたら食べるんだよ 欲しそうな人がいても"買ってね"と言うんだよ」
と言い 3人を快く送り出し いつまでも手を振り続けました。

それからは また2人きりの暮らしになりました
時おり 山や川から連れてくる人はいましたが なぜかみんな すぐいなくなります
ダンディさんや 黒豹さん お猿さんと共に暮らしていた日々が懐かしく思えました
そんなある夜のこと。表の戸を トントンと叩く音。
おじいさんが出てみると そこには誰もいない。また トントン。出てみる 誰もいない
よ〜く目を凝らすと 目の前には 真っ黒なチンパンジーがいました
暗闇にまぎれると 区別がつかなくなるほどの黒さで どうやら野生のようです
「さあ さあ お入んなさい」 おばあさんは優しく招き入れました。
どうやら 道に迷って北の山を さ迷い歩いていたようです
「なにも心配することはないから ここでお暮らしなさい」
おじいさんの言葉に チンパンジー君は 大きくうなずき ここで暮らすことにしました
チンパンジー君は よく働き2人を喜ばせました ただ時おり 野生の血が騒ぐのか
人間には理解できないような 行動を取ることがありました。
それでも おじいさんとおばあさんは うまく距離を取り 3人仲良く暮らしていました。

ただ おじいさんは ちょっと物足りなさを 感じていたらしく
「もっと 働くやつは おらんかのう…」 と つぶやいています
そんなある日のこと。おじいさんが南の町まで 買出しに出かけてみると
JALカウンターの前で じっと時刻表を眺める 小猿がいました 
「どうしたんだい?」 おじいさんがたずねると
「オラ 飛行機 乗ってみたいダ」 と目を輝かせ 小猿は言いました
「だら 乗ってみるか?わしについて来るか?」 「うん」
こうして また1人 家族が増え みんなで楽しく暮らす毎日でした
小猿はまだ若く おじいさんが驚くほどの働きようで 
あっという間に 家中が食料で埋め尽くされました これにはおばあさんもニコニコ顔です。
しかし その年の暮れ 小猿は突然言いました
「オラ いっぱい働いたから カネくれ」
おじいさんとおばあさんは ホトホト困りましたが 
家中売れるものは全て売って ありったけのお金を渡しました しかし 小猿は
「まだ足らん もっとくれ カネくれ」 と言います だがこれ以上はムリでした
「なら オラ 出て行くしかねえベ」 そう言い"マニー"とだけ叫んで 出て行きました。
働きブチを失い がっくりと肩を落すおじいさん。チンパンジー君に言いました
「おまいさんも 出てゆくのかい?」 
チンパンジー君は首を横に振り ニヤリと笑いました 白い歯とピンクの歯茎が強烈です。
そして 3人はまた いつもの暮らしに戻っていきました。

年も明けたある日。日常のマンネリ化防止のため おばあさんが山へ おじいさんが川へ
おじいさんが川へ着くと そこにはすでに 洗濯をしてる人がいました
ジャブジャブジャブ 丸く大きな後姿です おじいさんは声を掛けてみました
「こんにちは どちらさんですか?水は冷たくないですか?」
すると クルリと振り返ったのは 鬼! まさに 人を食わんばかりの恐ろしい形相の赤鬼!
"ギャー"おじいさんは叫び 一目散に逃げました
すると鬼は追ってくるではありませんか 逃げても逃げても追ってくる赤鬼
"なんでこんな日に川へ来たんだ 山にしときゃ…チンパンジーも助けに来ねえし…"
おじいさんは逃げながら 川へ来たことを とても後悔しました
だが おじいさんのすぐ後ろには 赤鬼が!危ない!早く逃げろ!もっと早く!
しかし よく見ると おじいさんと赤鬼の差は あまり縮まってません
どうやら 赤鬼の足は おじいさんと同じくらいのスピードのようです。

やっとのことで家まで辿り着き すぐに戸を閉め つっかえ棒で鍵をかけます
おじいさんは怖くて布団にもぐり込み ガタガタ震えていました すると
ドンドン「こんにちは」ドンドン「誰かいませんか?」ドンドン
表の戸を叩きます おじいさんは"だまされるモンか 今出たら きっと食われる"
布団の中で じっとしていました そのうち 表が静かになり
なにやら 人の話し声が 聞こえてきます よ〜く聞き耳を立ててみると
「…そうですか それそれは 遠いところを さ さ どうぞ お入りくださいまし」
おばあさんの声が聞こえるではありませんか それも あの赤鬼を家へ入れる と
おじいさんは 慌てて戸のつっかえ棒を手にとり それで赤鬼をやっつけようと思いました
「イヤッ」 戸を開け 棒を振りかざし 赤鬼めがけて 突進しました
「おやおや じいさん どうしたんですか そんなもん持って」
おばあさんが言います 傷も負っていません
おじいさんは慌てて"リンボ〜ダ〜ンス"と ゴマカシました。冷たい風が吹きました。

おじいさんが思っていた赤鬼は 赤鬼ではなく 限りなく赤鬼に近い"人"でした
人を外見で判断してしまったことに おじいさんは とてもとても反省して
何度も詫び その度 赤鬼風さんは「気にしてないよ」と 気遣う言葉を返してくれました
そして お詫びのしるしに ここに住むようお願いをし 赤鬼さんは快く返事をしました
ただ その顔はやはり怖く 食事の時にはできるだけ 目を合わせませんでした。

小猿がいなくなって 働き手に困っていた おじいさんでしたが
赤鬼風さんの働きは みんながビックリするほどで 山の芝刈りも 川の洗濯も
全部1人でやってしまいます おじいさんはすっかり彼を頼るようになりました
そんなある日のこと。山から帰ってきた 赤鬼風さんが言いました
「おじいさん すみません ボクは故郷に帰ります」 その目からは涙が溢れています
聞くと 彼の故郷 鬼が島から捜索願が出ていたようで 帰らなければならなくなった と
おじいさんは またもガックリとしましたが"鬼が島から捜索願"と言うことは
彼がやはり 鬼だったことを知り 少しホッともするのでした
複雑な思いの中 赤鬼風さんに別れを告げ "白い恋人とクラシック"を持たせました
彼は「甘いのは…」と白い恋人を チンパンジー君にあげ 
クラシックの方だけを大量に持って 鬼が島へ帰って行きました。
「また帰って来るから」 別れ際に残した言葉に また複雑な思いがよぎったのでした。

またも3人の暮らしになり 生活はより一層質素になったのですが
おじいさんの夢は膨らむばかり
"世界中の働き者を集めよう""昔 都で活躍したやつを呼ぼう""家の横に豪華な城を作ろう"
その度 おばあさんはお金を工面してきました それももう間もなく限界になります
そんな時 おじいさんがまた 大きな熊さんを連れてきました
「こいつは 働き者だぞ なんせ海の向うで 1番だった熊じゃ」
この言葉には おばあさんもチンパンジー君も さすがに安心しました
これで 暮らしも少しはらくになる。みんなが そう明るく思えました。
ところが この熊 冬眠間もないところを連れて来たようで まったく働きません
終いには 洗濯物を持って山へ行くしまつ これにはあきれて言葉もありません
とうとう おじいさんが「出て行け!」と。みんなは少しだまされたような気がしました
ただ よく考えると 間違っていたのはおじいさんの方で 1番の熊じゃなかったようです。

こうして またまた3人の暮らしに戻り そして借金は膨らむばかり
おばあさんは雑誌の"高収入!ビデオ女優募集"の広告に何度も電話しそうになりました
が その度 チンパンジー君の「それは ムリ!」の一言で 我に返るのです
その年は自然も味方してくれず 冷夏 長雨 日照不足 BSE問題…
秋の収穫はまったくと言っていいほどなく いいことなし の暮れを向えました。
そんな中 チンパンジー君が麓の村の娘と結婚することになり 大喜びしました
しかし せっかくの祝いごとにもかかわらず 今度は 嫁 小姑問題が…
結局 みのもんたに相談することもなく チンパンジー君と嫁は この家を出て行きました。

とうとう おじいさんとおばあさんの2人きりになってしましました。
それでもおじいさんは 夢を捨てきれません とうとう最後の勝負に出たのです
借りてはいけない所から お金を借り おばあさんの大事なへそくりを奪い
海の向うから 強烈なデコっぱち君とコーヒー色したシェパード君を 連れてきました
2人とも向うでは有名な職人さんで 人柄もよく おじいさんとおばあさんは期待しました
そんな4人で暮らし始めた ある日。ドンドン ドンドン 誰かが戸を叩きます
開けてみると「ギャッ!」そこには 赤鬼が立っていました
一瞬 身構える デコとシェパード 危険な空気が漂います
「あれ あれ 赤鬼さんじゃないですか おかえりなさい」
おばあさんが優しく招き入れます みんなは少しホッとしました
ただ よく見ると赤鬼さん 体中にケガをしているようで 片足も引きずっていました
どうやら 鬼が島がいやで 逃げ帰ってきたようです
「おまいさん そんな 体で大丈夫かの?」 おじいさんが聞きます
「いやいや 心配はいりません これくらい 少し時間が経てば すぐ直ります」
「そうかい そうかい それじゃあ よろしく頼むよ」
そうして また大家族になり 今年は良い年になりそうだ とみんな安心しました。

雪解けと共に みなは一斉に働きに出ました。
ケガで休んでる赤鬼を除く2人はよく働き おじいさんも それなりに喜んでいました 
ある日 シェパード君が「コーヒーが飲みたい」と言うので 
町までコーヒーとやらを買いに行き 彼に飲ませてあげました すると彼は
「こんなのはコーヒーじゃない ぼくの故郷のコーヒーは……もういやだ!帰りたい!」
と言い残し 突然帰ってしまいました どうやら特売のネスカフェは口に合わなかったようです
さすがに毎年のこと。おじいさんとおばあさんは もう慣れたもので
「帰ったのか?」「…みたいですね」と これだけの会話で終わらせました
デコっぱち君も 人柄は良いのですが 仕事となると我がままで いつの間にか消えました
残ったのは 赤鬼さん。2人の期待を一心に受けましたが どうも前のような働きがない
とうとう子供と遊んだだけで 大きなケガをしてしまい おじいさんも困り果て
「一旦 鬼が島へ帰ったらどうじゃ?」と助言しました
赤鬼さんも ただ黙って荷物をまとめるだけでした。
そうして 散々な目にあった この年も暮れていくのでした。


月日は流れ おじいさんとおばあさん 本当の2人きりの暮らしになりました
そんな ある夜のこと。
「じいさんや 今まで色んな人たちに助けられたけど あまり良いことはなかったねぇ」
「んだな あんまり他人を アテにしちゃ いかんって ことだな」
「ワタシもそう思います 中には良い人もいたけど やっぱり自分たちの子供じゃないと…」

「ん…そうじゃの 自分らの子供をしっかり育てるべきじゃのぉ…」
「そうですね…」
「…自分らの …子 か…」
「…………………」
「…なぁ ばあさん こっちの 布団に 入らんか…」
「…いやだヮ じいさんたら…」

×××××××××××××××××××××××××××××××××××××
over 20

そして 翌年。2人は8人の子宝に恵まれ 幸せに暮らしたとさ
めでたし めでたし。


NO.7 「北の国から 04 家族」 2004.2.13

札幌市 国道36号線 地下鉄福住駅近く ロイヤルホスト前
行き交う 車の音 ウィンドゥに映った 純

"父さん どうして こんな風に なったんだろう…。
  いつの間にか 少しづつ ずれ始めて… 父さん… 僕は…父さん…。"

ア〜ア〜 アアアア〜 ア〜ア〜 ア〜ア〜 アアアア〜 ル〜ル〜 ルルルル ル〜ル♪
北の国から 04 家族―――――――


店 員 「いらっしゃいませ」
純  「…コーヒー を… ひとつ…」
ロイヤルホスト 店内 賑わう客 友だち同士 恋人同士 親子連れ 楽しそうな笑顔
ぼんやりと眺める純 深いため息を ひとつ
5〜6人のグループが入ってくる 皆 赤い色の服を着ている

客 A 「…でさ それがまた 巧いの ホント なまらシビれたぁ…」
店 員「いらっしゃいませ」
客 B「…あれはイイべ  絶対 伸びるって うん…」
客 C「…で 何時から並ぶ? いつもの10時半で いい?…」
純の横を通り過ぎる一団 その中の女性が 純の前で立ち止る
女性客「…純…君…? 純君?」
純 おもむろに顔を上げる 表情が変わる
純  「れいちゃん?れいちゃん…だよ…ね…」
れい 「どーしたの?こんな所で? わぁー 懐かしい」
純  「そっちこそ でも ホント 久しぶり 元気だった?」
客 B「あれ?どうした?知り合い?」
れい 「うん 富良野の 純君 黒板 純君 あっ純君 この人 私の旦那さん」
純  「あっ 黒板です 黒板 純です はじめまして …です」
客 B「…純君? 富良野の… あっ聞いてます こちらこそ始めまして Rンバです」
純 Rンバ 2人 少しニガ笑いをする
Rンバ「じゃあ れい オレら あっちの席にいるから じゃ純君 また」
Rンバ ニッコリと笑い 仲間の席に行く れい 純の向かいへ座る
レイ 「びっくりしたぁ 表から見てね 似てる人がいるなぁ って思ってたの そしたら」
純  「いやぁ こっちこそ で 元気だったのか? 住んでるの 札幌なのか?」
れい 「うん元気元気 こっちには3年前に越してきたの 純君は?札幌?」
純  「そう オレも去年 こっちに…」
れい 「そうだ 純君 結婚したんだってね 子供も生れたって 聞いたよ おめでとう」
純  「あれぇ なんで知ってんの?誰から?」
れい 「うん一昨年ね 富良野に行って来たの… 旦那さんと…そしたら広介君に会って」
純  「で あいつが ベラベラ喋ったワケだ」
れい 「うん いろいろ 聞いた… 蛍ちゃんの結婚も おじさんの家も見てきたよ」
純  「(苦笑) はずかしい… あれ 自分で作ったんだよね」
れい 「聞いた聞いた すごいよね 尊敬しちゃう やっぱり おじさん すごいわ」
純  「去年"富良野だより"に載っちゃって そしたら また えらく張り切っちゃって」
れい 「へぇー すごいー でも どうして純君 札幌に来たの?子供も生れたのに」
純  「う…ん… 向うだと仕事がないし…金 稼がなきゃ…」
れい 「あっ …聞いた 広介君に…牧場経営 たいへんだったって…」
純  「…うん …だからね… 借金 いっぱいあるし …子供もいるし…」

談笑する Rンバたちのテーブル
客 A「ところで Rンバさん あの人 誰?随分れいちゃんと 親しいようだけど?」
Rンバ「ええとですね あの方は なんと 昔の彼氏! 富良野の時の ですけどね」
客 C「えぇ!大丈夫?2人にしといて?」
Rンバ「何 言ってんですか ぜ〜んぜん 大丈夫っすよ それより 今日のスタメンは…」

れい 「ねっ純君 奥さん 何て 名前?どんな人?どこの人?」
純  「ゆい 結ぶの"結" で 道東 羅臼のやんしゅう娘(苦笑)」
れい 「へぇ じゃ子供は? なんて言う名前? かわいい子?」
純  「さくた 花が咲くの"咲"くに 太いの"太"…咲太 すっごくかわいいよ」
れい 「へぇ 咲太君かぁ いい名前ね かわいいんだろうなぁ…でも 親ばか?」
純  「 そう 完全 親ばか(苦笑)やっぱ 血 かな」

れい 純の拳を見る その手には傷があった 
昨夜 イラだちのあまり 部屋の壁を殴りつけた その時に負った傷
純 そっと右手を テーブルの下へ隠す

れい 「…純君 …上手くいってる? ごめんね 急に変な事 聞いちゃって…」
純  「どうして…? なんか ヘンかな オレ…?」
れい 「うん… なんだか… ちょっと… 元気ないみたいだから…」
純  「…そっか… 上手くいってる って言えば ウソになるな… 金の…事とか…」

れい 「あの人ね(Rンバを見る) 会社 失敗したの 結婚して4年目に 独立して
会社興して 頑張ったのよ でも 失敗しちゃった 借金も たぁーくさん
でも あの人 すごーく元気なの 今は近所のスーパーで 魚 さばいてるわ」
Rんば 仲間の所で 談笑している 大きなゼスチャー 皆が笑う
純  「… そうなんだ… レイちゃんも たいへんだったんだ…」
れい 「ううん…ぜんぜん なんでかな そんな風に 思ってないの 元気だからかな
    毎日 帰ってくると 部屋中が 魚臭くなるんだけど 笑ってるの」
純  「………………」
れい 「前にね なんでそんなに元気なの?って聞いたら なんて答えたと思う
    "サッカーがあるから"だって 本気で言うのよ びっくりしたぁ」
純 無言のまま れいとRンバを 交互に見ている
れい 「最初はね 私も辛かったけど 今は分るの あの人の気持ちが…
    こうして 週末に サッカーに来ると なんだか 元気になれるの
    "仲間がいて サッカーがあれば オレは元気だって"子供みたいでしょ」
純  「… そっか… すごいね 旦那さん 偉いよ…」

れい 「そうだ!純君!一緒に行こうよ サッカー!ねっ!行こう行こう」
純  「えぇ いや オレ サッカー 詳しくないし…」
れい 「大丈夫よ みんな良い人だから きっと楽しいって 行こうよ」
純  「いや ちょっと 待って…オレ …いや…」
れい 純の腕を引き みんなの所へ連れて行く
れい 「みんなー 黒板 純君でーす! 今日一緒に コンサを応援してくれまーす!」
皆 一斉に"おお"と歓声を上げる 笑顔 Rンバが立ち上がり 握手を求める
Rンバ「おぉー 純君 ありがとう! 一緒に応援するべ なっ いやいや 嬉しいな」
純 戸惑いながらも"よろしく"と 頭を下げる
Rンバ「よっしゃ じゃ行くか 今日も 気合入れて 頑張るどー!!」

"店を出ると 僕らは清田の方へ歩き始めた 道の向うに 銀色に輝く ドームが見えた
 成り行きの上とは言え レイちゃんに会ったこと 見知らぬ人たちと サッカーへ行くこと
 不思議な偶然が重なった ドームまで歩きながら れいちゃんと最後に会った日の事を
 思い出していた そう れいちゃんの結婚式の日 僕は教会まで行った
 木の陰から そっと れいちゃんのウェディング姿を 見ていた それが最後だった"
れい 「さっきの店 よく行くの?」
純  「うん たまにね… 考え事とかあると 行くんだ…」
れい 「私ね ずっと前 あそこでバイトしてたの 福住のロイヤルホスト」
純  「…覚えてるよ ラジオにリクエストした時 "富良野の純君へ"って
尾崎の"Ilove you"(照れ笑い) あの店まで 探しに行ったもの」
れい 「そう 覚えてて くれたんだ…」
純  「だってあの時 たいへんだったんだゼ ラジオ局 行ってさ 住所調べてもらって」
2人 顔を見合わせて笑う "I love you"が流れる
れい 「ね 純君 家 近くなの? 私は 今 豊平のアパート ちっちゃいウチ」
純  「ウチも狭いんだぁ 親子3人 1部屋だゼ マイるよ 住んでるのはあっちの方」
純 36号線の向うを指差す 行き交う車 その向うの町並み

純  「あっ あっ え〜と お 大人 1枚 …ください…」
店員 「座席の種類は?SS・S・SA・SB・B自由 とございますが?」
純  「あっ あっ あの〜 え〜と …」
れい 「…(小声で)B自由…」
純  「あっ あっ ビ B 自由 B自由! …だそうです」
店員 「はい 2000円に なります」
"ビックリした〜 2千円 高っけ〜 テレビなら タダだゼ それにB自由ってなんだ〜"
れい 「じゃ 行こう! 純君!」

2人 急ぎ足でドームの中の階段を上る スタジアム出入り口から 明かりが見える
人ごみを掻き分け 入り口のトンネルを抜ける 薄暗がりから 一瞬に視界が広がる
色鮮やかな緑の芝 澄んだような開放感 果てしなく続く客席 高い天井 人々のざわめき 
れい 「どうしたの?」
純  「いや すごいな ドームって… オレ 始めてきたから…」
れい 「すごいでしょ 前は ここ いっぱいになったことも あったのよ」

"長い階段を降り 席に着くと みんなは着替えていた チームのユニフォームらしい
 ボクと言えば いつもの首の伸びたセーター きっと それは浮いているわけで
 それでもレイちゃんは 気にもせず 飲み物をくれたり おにぎりをくれたりして
 そういうことに ボクは少し 恐縮するわけで なんだか 旦那さんに 悪いように思われ"

Rンバ「純君 コレ ビール ま ま 飲んで」
Rンバ 販売に来た生ビールを2つ買い ひとつを純に渡す
純  「あっ 金 金 払います 僕 あっ いや」
Rンバ「いいって いいって 純君 オレ嬉しいんだ 純君とサッカー見れるの…さ 飲もう」
純  「はぁ いや どうも… すいません…」

"それから 選手たちが出てきて 練習を始めた 向うのチームより 随分若い選手が多かった"
れい 「ねえ ねえ純君 あの2番の選手見て 岡田君って言うの 
    このみんな 彼を応援してるの 純君も応援してあげて」
純  「へぇ……あ うん…」
スタメンの紹介がアナウンスされる"背番号2!岡田 ゆ〜き〜!"
「おぉ〜!」グループが一斉に立ち上がり ひときわ大きな歓声 純もつられて立ち上がる

"試合が始まった テレビの画面と違い 向うに伸びるグラウンド 
正直僕には どちらに攻めているのか 分らなかったりするわけで
それでも レイちゃんや旦那さんは 立ち上がったり ため息をついたり 大声をあげたり
1つ1つに反応していて それが 僕には 少し うらやましかったりして…"

れい 「ほら ほら 純君 見て2番 上がってきてる 見て」
Rンバ「いけ〜! 岡 田 〜!! 決 め ろ 〜!!」
場内が歓声に包まれた アナウンスが流れる"只今の得点 背番号2 岡田〜ゆ〜き〜!"
れい 「岡田く〜ん!」
Rンバ「岡田〜!やった〜!岡田〜!!純君 岡田が 岡田がやったよ!」
Rンバは純に抱きつく れいも2人に抱きつく 純は少し戸惑った

"その時 僕は 漠然とだけど レイちゃんが この人を好きになった気持ちが
  少し分った気がした そして 今を"辛くない"と言った 言葉の 意味も…"

後半35分経過 1−0 残り10分 相手チームは 猛攻に出る
Rンバ「ガンバレ〜!あと10分!あと10分だ〜!守れ〜!」
れい 「ガンバレ〜!もう少し!コ〜ンサ ド〜 レ!」
コンサドーレ・コールが場内に響き渡る オーロラ・ビジョンの時計は 残り5分
場内 「コ〜ンサ ド〜レ! コ〜ンサ ド〜レ!」
純  「コ〜ンサ ド〜レ!…がんばれー…!」
Rンバ「そこ!抑えろ!あ あ センタリング 上げさすな!!」
れい 「あ〜!アブな〜い!ガンバレ〜!!もう少し〜! あと少し〜!」
純  「守れ〜!コンサドーレ! ガンバレ〜!!」

"いつの間にか 僕も 大声で応援していた"
「ピッピッ ピーー」 試合終了の笛が鳴り響いた
Rンバ「やったー!!」
れい 「勝ったー!!」
純  「勝った!勝った〜!」
3人 また抱き合い 飛び跳ね 喜びを爆発させた
Rンバ「いやいや 勝った 純君 ありがとう あ〜 良かった〜 
    いや ホントはね 今 3連敗中で もう勝てないんでないかって…あ〜良かった」
れい 「ホント ホント 純君 勝利の女神だよ〜」
純  「いや… そんな… 女神なんて… でもホント 良かった〜」

"そして 僕らはドームを出た さっきまでの興奮が まだ体の中に 残っていた…"
れい 「あ〜楽しかった ごめんね 今日は 無理やり誘って」
純  「いや ぜんぜん オレも楽しかったし 少し… 元気が出たよ…」
れい 「また来ようよ 今度は 結さんや 咲太ちゃんも一緒にね」
純  「う…ん… そう したいけど…」
れい 「…ねぇ…純君… 結さんを 大切に してあげてね 嫌いじゃ… ないんでしょ?」
純  「うん… そうじゃないけど… なんか こう すれ違うって言うか… うん…」
れい 「 …ウチもたいへんな時あった… 私も逃げ出したくなったし…
    でも 逃げてもダメなんだよね つらくても一緒に 歩かなきゃ って…」
純  「そう… 分ってるんだ でも なんか 自分が 歯痒って いうか…」
れい 「 …ほら私も 富良野の時 逃げちゃったでしょ お父さんと…
    で 私もおんなじ事しちゃうのかな って思うと なんか すごく悔しくて…」
純  「……………」
れい 「だから 頑張ったの で あの人は もっと頑張ってるの…
    ね だから純君も 頑張ろうよ ね きっと大丈夫だから」
純  「…うん …ありがとう …れいちゃん…」

"福住駅に着き 僕らはそこで 別れることにした"
Rンバ「純君 今日はホントに どうもありがとう また 行こうな なっ」
れい 「そうそう また一緒に行こうよ また 応援 ねっ」
純  「… そうします また 誘ってください 今度は家族と行きますから」

"そして 彼らは 地下鉄へと潜って行った 別れ際 れいちゃんは振り返り
 が・ん・ば・れと微笑んだ ホントに 今日は ありがとう れいちゃん Rンバさん"

豊平方面に歩く 純 ロイヤルホストの前に差し掛かる ウィンドゥを見る
たくさんの客の中 窓際のテーブルに 結と咲太がいた
店 員「いらっしゃいませ 1名さまで ござ…」
純  「いや 連れが そこに…」
店員の言葉を遮るように 2人の席に向う 純 それに気がつき 微笑む 結
純  「待たせたな」
結  「別に〜 純 なんか 待ってないもん ね〜咲ちゃん」
純 笑いながら 咲太を抱き上げ 結の手を握る
純  「じゃ 帰ろうか」


"父さん 富良野は変わりないですか 寒くはないですか 
この前 膝が痛いって 言ってたけど 大丈夫ですか もっと暖かくしてください
こっちは変わりないと言うか 変わりつつあると言うか 少しづつ ですが
なんとなく 家族ってものが ほんの少しづつですが 分りかけてきました
父さん 僕は 今 父さんを すごく 尊く 感じ 近づきたい と そう思ってます
なんか 急に ヘンだと思うけど ホントに そう 思ってます

夏には帰ります 咲太を 思い切り 抱き上げてください"

振り返ると ドームは 優しい光を放ち 僕らを暖かく 見守ってくれていた。
「北の国から 04 家族」 完


NO.8 『閃光』 2004.2.28

満身創痍。

その言葉が 選手たちの頭に渦巻いていた。
2005年1月1日。天皇杯 決勝。国立競技場のロッカールーム "満身創痍"の選手たち。
前半を終え 0−0。相手 鹿島アントラーズは試合開始から 猛攻に出てきた
全ての力を牙に変え札幌を襲う。本山が 小笠原が 新井場が 深井が 容赦なく攻め立てる
前半の途中 小笠原の放ったシュートをゴールマウスの中 曽田の左足が かろうじて当たった
曽田はそのままゴールネットまで縺れた だがボールは深井へと渡る そしてシュート
曽田は飛び上がり 今度はヘッドでクリア しかし それを本山がダイレクトでシュート
藤ヶ谷が飛ぶ 右手をかすめ クロスバーを越えた。
前半の45分間 ほとんどがこのペース。0点に凌いだのは 奇跡としか言い様がなかった。
札幌の選手たちには 長く長く思われた前半が ようやく終わった。

傷つき 疲労し ここまで来た事への 自信も失いかけていた。
皆うつむき ただじっと回復を待った。後半をどう凌ぐか…そればかりが頭を駆け巡った。
その時 ロッカールームのドアが開き 柳下監督が入ってきた
皆 一斉に顔を上げる が その目には力がなかった。監督は選手たちの顔を見回し

「なぁ 10点ぐらい 取られてみないか?」

そう にこやかに言った。選手たちは唖然とする。監督の言葉の意味が理解できなかった
散々だった前半をどう修正し 勝つために後半をどう戦えばいいか 具体的な指示を求めた。
次の言葉を待つ選手たち。だが監督はしばらく沈黙した。その目は穏やかな炎が点っている。
「なぁ 尽 アントラーズは強いな 特にこういう試合は オレは何回も痛い目にあったよ」
選手たちは 不思議そうな目で 監督を見た。天皇杯決勝 ハーフタイム 僅か15分の間で
やるべき事は山ほどある 前半の修正 体力回復 ケガの手当て 後半戦の戦い方
監督の指示だけが 後半への標だ だが監督はホワイトボードも出さず ノートも持ってない
おそらく具体的な指示を出す事はない 選手たちは覚悟を決めた
監督の言葉を 全身で受け止めよう と。

「しかし おまえら よくここまで 来たよな いや お世辞じゃないぞ 大したもんだ
 中尾 足 大丈夫か? 相川 おまえも」
2人は静かにうなずき 真っ直ぐに監督を見つめた。
「そうか ならいい。他のみんなも痛むところはあるだろうけど もう少しだ 頑張ってくれ」
佐藤 尽の左足首がズキッと痛んだ 新居も前半の接触プレーで軽い脳震盪を起こした
「この中で天皇杯決勝を戦った事があるのは オレと…尽だけだな なぁ尽 どうだ今回は?」
「…フリューゲルスの時とは…力が違いますし…今回は奇跡…と言うか…」
「奇跡か…でもな 奇跡もそう続くもんじゃないぞ レッズに勝ったのも マリノスに勝ったのも
 相手が油断してくれた事もあったが 奇跡じゃない おまえらに力があったんだ」
今まで監督に誉められた事はなかった 選手たちの表情に 僅かな光が点った
「けどアントラーズは違うな 本気で来る 油断は一切しない 力の差は歴然だ
 だから10点取られてもいいんじゃないか? 歴史的な大敗しようや みんな」
監督にそう言われ 選手たちの力みが消えた「思い切り"負け"に行く」そう考えると
後半が楽しく思えた 選手たちは一刻も早くピッチに出たくなった。新居がニヤリとする。

「よっしゃ! 歴史に名前 残すぞ!」 尽が叫ぶ
「負ける方で!」 砂川が続く ロッカールームにどっと笑いが響く。
「よし 行って来い!」 監督の言葉と共に 選手たちは送り出された。
満員の国立競技場。7割が鹿島サポーターで埋まっている 1〜2割が札幌サポーター
だが声援の大きさでは負けてない 選手たちには大きな後押しとなっていた
円陣を組む キャプテン佐藤 尽が声を出す
「いいか 思いっきり 負けに 行くぞ!派手に行くからな」
「尽さん それ 日本語として 間違ってないすか?」 中尾が笑いながら言う
「いいんだよ(笑) とにかく 思い切りな!いいな!負けに! 行くぞー!!」
笑ったまま 「ウォー」と叫び 選手たちはポジションに散った。

後半戦 開始。鹿島は前半同様 怒涛の攻撃を見せる クリアするも次の網に掛かる
後半8分 鹿島 左コーナーキックから DF金古が頭で合わせ ゴール右隅に飛ぶ
藤ヶ谷が左手一本で弾き出す 曽田に手荒く感謝される 砂川が口笛で冷やかす。
15分 深井がペナルティエリアをドリブルで切れ込む 西澤が体を張ってスライディング。
23分 小笠原のアーリークロスを 本山がダイレクトボレー だがゴールポストに直撃する
跳ね返った所に 平瀬が詰める 中尾が体を入れ 何とか阻止 遠くで新居が拍手する。
フールドプレイヤー10人の内 新居を除く9人が守りについていた
新居は1人 前線でひたすらボールを待った そして どんなボールにも喰らいついた
32分 曽田からのロングボールを 砂川が相手DFと競り合い 右肩を強打した
だが起き上がり すぐに新居へパス 20mをドリブルで持ち込みシュート
惜しくも ゴールポスト左へ逸れた。この試合 初めてのシュート。相川が親指を立てる。
38分 左サイドを抜けた新井場から 小笠原へマイナスのパス そのままミドルシュート
佐藤 尽 左足を目一杯伸ばし かろうじてクリア だが左足に激痛が走り そのまま倒れる
駆け寄る曽田から×印しが出る。キャプテンマークが砂川に渡された
「頼む…」 尽が言う 砂川は僅かに微笑み

「勝ちますよ」

そう告げ キャプテンマークを巻いた。曽田・中尾・相川・岡田 皆 うなずいた。
代わって入ったのは 鈴木 智樹。DFの尽に代わりMFの鈴木。それもトップ下へ入れた。
相川・新居の2トップ その下に砂川・鈴木。諦めていないのは 監督だった。
残り5分。攻め疲れの見える鹿島。札幌も疲労はあった だが鈴木の投入が意味するものを
選手たちは理解した 「負けてたまるか」 監督の意地と選手の気持ちがひとつになった。
前線からボールを奪いに行く 中盤 中尾・三原も それに続く ここに来ての烈しいボール争い
鹿島の選手たちは戸惑っていた。どこにこれだけのスタミナが残っていたのか
前半 あれ程まで手応えのなかった札幌が まるで生き返ったように動く
残り2分 中田(浩)のパスに本山の反応が遅れた すかさず鈴木が奪う 右サイド岡田へ渡す
岡田から砂川へ ドリブルで本田をかわす 相川へパス が相手DFに囲まれる
その時 岡田がサイドから抜け出てきた DFの足の間を抜け 裏へボールが出る
猛スピードで岡田が走る 最後の力を振り絞った"とどけ…"タッチラインぎりぎり 追いついた
そのままダイレクトでニアサイドの新居へ GKと1対1。
「打て!タツ!」 岡田が叫ぶ。右足 サイドキックで慎重に合わせた スピードはないが
ゴール左隅に向かい ボールは進む だが次に見えたのは GKの両手だった
「頼む 触るな…」 相川が祈る しかし無情にもボールはGKの手に当たり 弾かれた
ペナルティエリア左にボールは転がる 砂川が必死で向う 名良橋も追う GKも飛び出す。

一瞬 誰よりも早く ボールに追いついたのは 鈴木 智樹だった。

躊躇わず 左足を振り貫く 飛び出したGKの指をかすめ ゴールネットを揺らした。
後半44分 無得点のままの試合を破ったのは 18歳 鈴木だった。
約1万人の札幌サポーターからは 悲鳴に似た大歓声。
いや 会場だけではない テレビの前でも 多くの人が 叫び そして泣いただろう
今シーズン J2のリーグ戦を21勝7分16敗。5位で終えたチーム。
優勝はおろか昇格も及ばなかった札幌が ここまで来る事を 誰が予想しただろう。
育成の名の元に耐える事を決意したサポーター その1年目にこれ程の出来事があろうとは。
得点を決めた 鈴木の下へ 岡田が 新居が 相川が 砂川が 折り重なった
ベンチでは柳下監督が大きなガッツポーズをしている。佐藤 尽は座ったまま 泣き崩れた。

だが試合はまだ続いている ロスタイム表示は4分。リスタートされた。
互いに最後の力を振り絞る。新井場が 名良橋が クロスを上げる 曽田が跳ね返す
中田(浩)のミドルシュートが枠に飛ぶ 藤ヶ谷が弾き出す
本山が 深井が ドリブルで牙をむく 砂川も懸命にスライディングで防ぐ
全員の体力は限界を越えている だが体は不思議と軽かった
満員の観衆も気にならない 天皇杯決勝である事すら忘れて ひたすらボールを追った。

そして 試合終了の笛。
鹿島の選手が力なく崩れ落ちた。瞬間 岡田の耳に つんざくような大歓声が入る。
「勝った…?」 実感が湧かなかった。今日始めて国立のスタンドを見た。
超満員だった 緊張なのか 集中なのか これ程の人が入ってる事に始めて気づいた。
スタンドの一角 札幌サポーターに向かい 大きく手を振った。そして深々と頭を下げた。
佐藤 尽が左足を引きずりながら 駆け寄ってくる 中尾が抱きついた
新居が監督に抱きつき泣いている。大森も 三原も 鎌田も 監督のそばに駆け寄る。
ペナルティエリアの中で 大の字に倒れる砂川 岡田が抱き起こしに寄る
「砂さん 行きましょう 監督のところに」
「…なぁ オカ 俺 札幌に来て ホント 良かったと思ってるよ…」
「…俺もです ホント 良かった…」 優勝の実感が じわじわと湧いてくる。
砂川を起こし 2人ベンチに向う 砂川の巻いたキャプテンマークを 尽に渡す。
「何が 負けに行く!ですか」 砂川が ニヤリと言う
「ばか それ言ったのは おまえもだよ…」 そう言う尽の目は 真っ赤に腫上がっていた
2人は握手した。それ以上の会話は無かった。いや言葉にならなかった。

メインスタンド 表彰台 ひとりひとりの胸にメダルが掛けられる
「よくやった」 「おめでとう」 川渕氏の目にも涙が潤んでいた。
岡田の胸にもメダルが掛けられる その時 始めて 涙が零れた 止めどなく 次から次へと。
いつしか 国立は大歓声で埋まった。
鹿島サポーターも札幌サポーターもない そこに埋まったのはサッカーを愛し 尊ぶ者たち
だからこそ このまだ蒼く 未成熟なチームが成し遂げた偉業を 大歓声で称えた。


両手を高々と上げる 佐藤 尽。その手の先には 天皇杯がキラキラと輝いた。


NO.9 アテネを祝う。 2004.3.20




U−23がアテネ五輪を決めた。いや 決めてくれた。
本当に 本当に 嬉しいことだ 選手たちに おめでとう そして ありがとう と言いたい。

私が始めて このチームを見たのは 2年前のツーロン国際大会
コンサドーレから山瀬と藤ヶ谷が出場していたこともあり 当時の様子をよく覚えてます。
当初 このチーム 山瀬を中心に 攻撃力は優れていたのですが どうにも守備が不安定で
DFラインに入る選手たちが「どう守っていいか分らない」と言う爆弾を抱えていました
言葉は悪いですが 一言で言って「軽いチーム」と言うのが 最初の印象。
あれから2年の後 DFの守備組織は トゥーリオを中心にしっかりと形成され
オリンピックを戦うに相応しいチームと変貌しました。

とは言っても アトランタ組のように 強い追い風があるわけでなく
シドニー組の中田や俊輔を要した 華麗なパス回しがあるわけでもない
あるのは 「たぶん出れるでしょう」と言う 無責任な風潮だけ
そう言う意味では 選手たちに相当なプレッシャーがかかったのではないでしょうか
そんな中でも 戦う姿勢は崩さず 己を見失わない 強い精神力に感心しました
まして2年前を知る者として その成長振りには 驚きと共に感動があるのです。
それまでの様々な監督を経て 鍛え上げられたこのチーム アテネへの仕上げとして
山本監督が取り組んだのは "精神力" だったように思います。
ただし一番 精神力が弱かったのは監督さんのようで 大会途中で泣いちゃイカンよ泣いちゃ

壮行試合 五輪最終予選6試合を通して 目を引いたのは やはり 今野
皆さんの感想と同じで カバーリング・プレッシング・ボール奪取・攻撃の起点と
あらゆる面で 彼の活躍が光っていました。
なにより"一番危険な所に一早く対応する"それが彼の一番の良さではないでしょうか
一時も気を抜かない 90分集中力を持続できる力を 身に付けていました
アテネへの切符を手にした後のインタビューで
「バーレーン戦に負けた事で だいぶん落ち込んだ」 と言っていたのですが
最終UAE戦の彼を見る限り 落ち込んだ様子など 微塵もなく
素晴らしいパフォーマンスを見せていました
おそらく彼は 精神的なマイナスを 力に変えれる能力を持っているのだと思います
その能力に磨きをかけたのは 言うまでもなくコ○サドー○でしょう
なんせ 3年間 イヤと言うほど 精神的マイナスを喰らいましたからw
早い話し 守備が巧くなりたければ 弱いチームに行きなさい と言う事で…。
冗談はさて置いて 誰がなんと言おうと 彼がアテネへの道を開いた事に違いありません
今後のJリーグでも注目されるのでしょう 彼の活躍をTVで見守る事にします
その前に もう少しアカ抜けろよ コンちゃん 小笠原 満男も少しは良くなったぞw

もう一人 注目していたのは やはり 田中。と言っても マルクス闘莉王の方。
もちろん 今大会の田中 達也は素晴らしい あの小さい体で中東の選手と戦うのは
並大抵の事じゃないですし ゴールを向く反転力はシビれます
ただ今大会から登場した 田中マルクス闘莉王さんは 異次元の注目度でした
彼のプレースタイルは もう語るべくもないので止めますが
山本監督が 彼をどう使うのか いや そもそも出場させるのかを 注目したのです
彼を使うことのリスクを負うつもりなのか そしてリスクをどう解消するか を
見ていたのですが 両方ともにキッチリとした答えを持っていました
相当 勇気のいる決断だったと思います やまもっちゃん あんたはエライ。
最後は 肉離れという残念なケガに泣かされましたが 本大会を期待します
そして彼の存在が 今後の日本サッカーにどう影響を与えるか それが楽しみなのです。

闘莉王に対しての 山本監督には 強い決断力が感じられた
ただ それ以外のところでは いくつかの ?マークが付くのです
例えば 右の石川をあまり使わない なぜ あの攻撃力を捨ててまで 徳永なのだろうか?
確かに徳永は 守備の安定感がある 闘莉王のリスクを考えれば右サイドは守って欲しい
そう考えた結果なのだろうけども 今野にカバーリングをさせ 石川を使わない
さらに左の森崎は ほとんど攻撃で光る事はなかった
このリスク解消のさせ方は どうなんだろう 攻撃力を犠牲にしすぎてなかっただろうか
付け加えて言うならば 徳永のプレーに問題ないのだが 判断力にアマチュアが感じられた
大学生と言えども あの大舞台 僅かな判断ミスが命取りになる 
彼には少し 荷が重かったように思えたのです。
もうひとつ 第4戦 バーレーン戦 0−1で負けている段階で なぜ"左"に石川か
なぜ 大久保・平山のFWでなく "中盤"の松井だったのか
あの交代の中に 同点はあっても逆転は考えにくい それが分らなかった
そして 5戦目の途中で3トップにした それが出来るなら バーレーン戦でこそ
するべきではなかったのか 最終戦 急にスタメン3トップはリスクがありすぎる
素人目で生意気な言葉かもしれませんが 山本監督の
"リスクを負うべきところ リスクを避けるべきところ"の判断力には疑問が残った

それでも 「五輪出場」 という結果を出したのだから 疑問はあるが 不満はない
戦うチームに育てた事も サッカーファンとして感謝している
なにより 彼らは 8月までの楽しみ 8月からの幸せを与えてくれた それは違いない
そんな選手たちには 言葉に言い表せれないくらいの感謝で一杯だ
そして もうひとつ 私たちはチャンスをもらった

岡田 と言う チャンスを。

彼が 五輪出場するという夢を 私は捨てない。そして 必ずや掴んで欲しい。
そうしたら 迷わずアテネへ行ける 頑張れ 岡田 祐樹 時間はある。

最後に もう一度。 おめでとう 五輪代表 ありがとう 五輪代表。



NO.10 04コンサ 序盤にて。

「ああ 今日はコンサドーレの試合なんだもねぇ」
「ええ」
「なんか 今年は調子イイみたいで 監督がイイんだってねぇ」
「ええ まぁ」

昨日 ドームへ向うタクシーの中 運転手さんとの そんな会話。
多少の社交辞令もありましょうが 最近はこういった会話がよくあります。
開幕から1ヶ月が過ぎ サッカーやコンサに興味のない 遠巻きに眺めてる人たちからも
今年のコンサは"悪くないらしい"という評価を得てるようで つい顔が緩むのです。
巷の噂もそんなですから 当然 私らのように サポーターと言われる者の
期待値は 計り知れないのでしょう 岡田や鈴木 智を 実際に見ている者としては。

ただ 去年・一昨年と比べて どこがどう良くなった?と聞かれると
ちょっと返答に困ってしまいます。
例えば 日本ハムのように「新庄が来た」これだけでも 人気の理由になるのですが
コンサの場合 連勝してるわけでもなし 内容が格段に良くなったわけでもない
「紆余曲折の中 若手に切り替えて頑張っている」 そう曖昧な答えしか出来ないのです
実際 結果のみを挙げれば 6戦で1勝4分け1敗。勝点7。
昨年の6節時点では 3勝1分け2敗の勝点10 と出足から不調だった印象がある
昨年より下回っています 内容も 昨年は同時点で13得点と 得点力も高く
特に新潟を完封したり 室蘭では福岡を相手に ウィルのハットを含む5得点と 
今思えばそう悪くなかったはずです。確かに 至上命令である"昇格"を基本とすると
負けそのものが フラストレーションとなるのですが それとはちょっと違った不満が
あったのではないでしょうか。例えるなら"チームの方向性"のような。

悪くないのに不満が残った去年。そう良くはないが期待は高まる今年。
と対照的なシーズンの出足となっています。去年までとは状況が違うのですから
一概に比較は出来ないのですが この1ヶ月を振り返っても 変わった所は幾つもあります
例えば 圧倒的な存在感の外国人選手がいなくなり ボールはコート満遍なく使われる
右から 左から 中央から 攻撃のバリエーションは豊富になったのです。
昨日の試合 市村のゴールに象徴されるように 左MFが中に切れ込み ゴールする
右の岡田も高い位置でボールを貰ったなら 必ず勝負に行く
これらのプレーには攻撃のバリエーションが増えた という事だけじゃなく
若手が思い切りの良いプレーをしている という事も含まれるのです
昨年までには そうそう見れなかった事ではないでしょうか。
FWの新居も同様 昨年とは格段の違いがあります。彼らに見る"伸びやかさ"が
今年 期待させる何か なのでしょう。
こういった"勝負どころでキッチリ勝負に出る"というのも今年の良さではありますが
そうさせているのは 柳下監督であることに違いありません。

そう 今年 チームが変わったのは 柳下監督。この人の手腕と言って過言でないでしょう。
静岡一筋で来た柳下氏にとって 札幌は異国とも思える環境だったでしょう
1月 一面に広がる雪景色も じっとしている事の出来ない寒さも ツルツルの路面も。
更に言えば サッカー環境の差には愕然としたのではないでしょうか
まして 歴史的路線変更を示したコンサには 今までのような資金面の贅沢さはなく
昨年の主力はほとんど放出 入るのは新人のみ と言う厳しいものです。
頼るべき選手は 砂川のみ。まっさらな状態の中 1からの作り出し だったはず。
2年・3年目の 新居にしても 岡田にしても 市村も 吉瀬も 昨年はレギュラーではなく
鈴木 智に至ってはまだ18歳。彼らを主力に使うには相当な配慮が必要だったと思います
そんな彼らに 何を伝え どんな練習によって 今に至ったか分らないのですが
経験の薄さをカバー出来るチームになっている 監督の手腕には感心させられます。
多少 不安定な所があるのは ご愛嬌ということで。

こうして 冷静に そしてしっかりと チームの土台作りは進められてるのですが
もうひとつ監督に驚かされるのは「勝利への執念」。
先週の室蘭も 昨日のドームも 後半MFを下げ FWを投入しています
この采配には賛否があると思うのですが「ホームでは絶対勝つ」という意思を感じ
前のめりで応援する者にとって こう言う事を嬉しく思うのです。
残念ながら まだ結果を残せてはいないのですが 必ずやその意思は伝わるはず
監督を信頼し その想いをもっともっと深く受け止める時が来たなら
きっと結果は出てくるのでしょう その時は チームも一回り二回り強くなってるはずで。

とは言え どこまでが選手の力で どこまでが監督の力で 良くなっているのか
正直分らないのですが 昨年までと違う点には 監督の力が大きいように思います。
それも開幕から僅か1ヶ月の今 日本人だけ 若手中心の中 チームを作り
見る人を楽しませる プロサッカーとしても十分な価値がある試合をしているわけで
ましてサポーターと自認する者なら なおさら。なんせ前のめりですから。

先日 某サイトに載っていた 柳下監督のインタビュー。
「札幌のサポーターは優しい もっと厳しくてもいいと思ってます」 こう言ってました
たぶん 厳しくはならないでしょう 特に今は。
サポーターは知っています 今のチームの良さを。そして期待を込めた観方があることを。
何より 単身 頼るべき者もない中 尽力を注ぐ監督に 応援を送り続けるでしょう。
厳しさより 暖かさ それが札幌サポーターなのです。


幻想的期待感を漂わせながら 札幌を熱く厚く見守るサポーター
それに応えようとする 選手 監督。 薄っすらと見えてくる 未来予想図。
悪くない。そう思える出足。
ただ この夏ぐらいには ギアをひとつアップしてほしいなぁ。焦りたくはないけど。

元旦 ジュビロでの最後の仕事を 男泣きで終えた 柳下氏。
いつの日か 札幌で もっと もっと 泣かせてみたい そう思える監督さんです。
いや その願いは きっと叶うでしょう。

昨日のタクシーの運転手さん。
今年はまだ始まったばかりです。楽観はしてません が
今年のコンサ 間違いなく イイです。



2003.11.23 隊長 横浜遠征!

NO.11 隊長

祝。 「袖ふれあうも☆コンサの縁」 OSC設立。

この度 汗と涙とハナ汁の 努力から生れました「袖☆コン」にご参加頂き
誠にもって 至極光栄に存じる次第でございます。
って 私が何か努力したワケじゃないですね。

主宰者は もちろん コンサおやじさん。

「コンサ外伝」の超常連者 コンサおやじさん。
昔はライダーだったと言う なかなかカッコいいおっさん。
元気で 楽しい けどもちょっとシャイな おっさん。
そのコンサおやじさんが OCS設立に立ち上がりました。
きっと いろいろ考えた末の結論だったと思います
私を含め 参加志望した人たちに 異論はないでしょう
おやじさんを知る者として その人望に敬意を払い「蹴馬鹿」の主役になってもらいます。
そして 私は密かに コンサおやじさんを"隊長"と命名したのでした。

札幌から遥か170km 名馬の町から おやじ隊長はやってきます。
深夜と早朝の境目 まだ真っ暗なうちに家を出発し やがて白々と明ける空を眺め
今日の試合 選手たちのことを思い浮かべながら 札幌へと辿り着くのです。
そして 恒例の"居酒屋"開店。
と言っても おやじ隊長がネジリ鉢巻で焼き鳥を焼くワケではないです
自前の缶ビールをプシュと空け 開場を待ち続けます それが"居酒屋ドームor厚別"。
そうして待ち続けてる間 いろんな人が顔を出しに来ます
函館から 倶知安から 室蘭から 札幌から 全道各地から集まった仲間たち
隊長は言う「彼ら彼女らとの ふれあいが楽しいから 早く来るんだ」と。

4/17 横浜FC戦。 遅ればせながら 私も初めて"居酒屋"に参加しました。
と言っても 早く行かなければならない理由がありまして 急きょ家を出たのです
それは おやじ隊長の「OSC設立宣言」を見た後 氏名・年齢・住所などメールで送ろうと
懸命にパソコンと格闘したのですが ぜんぜん送れない。どうやっても 送れない。
私の場合 尋常じゃない機械オンチなもんで 洗濯機やレンジでさえ無理
そんな昭和初期型人間がパソコンを自在に操るなんて 夢の世界でございます
そんなワケで ワープロ打ちした名簿を 隊長へ いち早く届けようと 家を出たのです。
午前11時 札幌ドームに到着し さっそくおやじ隊長へ連絡
「おー! kazuaさん! ビデオの流れてる部屋にいるよ あったかいよ」
ようやくおやじ隊長を見つけ 合流したのですが 隊長はすでに"イイ感じ"に。
まずは我が家分2名の名簿を渡し 遅れた理由を話しましたが 覚えてるかどうか…
なんせ " す で に イ イ 感 じ "だったようですから。

「いや〜来てくれて嬉しいよ」「ありがたいねぇ」そう言われるたび 恐縮してしまいます
そうこうしてるうち 開場の時間に。当日券を買うため 座席の確保は隊長にお願いし
チケットを買い ルンバさんと合流し ゴール裏 おやじ隊長の元へ。
隊長は 席に着くや否や まずビールを買う 飲む また買う 飲む 買う
隊長の勢いは止まることを知らない さらには
「はい ルンバさん」 紙コップの生ビールは渡される ルンバ氏も飲む 買う 飲む
その間 私はずっとアイスコーヒーをちびちびと飲む 買う 飲む
だがコレは危険だ コーヒーには利尿作用がある そう トイレが近くなるのだ マズい
しかしもっと危険な男がいた おやじ隊長。10分おきにトイレに行く
結局 隊長は試合中も幾度となく トイレに走ることになった。だ・か・ら程々に。
そして 選手たちが試合前の練習に出てくる 高々とゲート旗を掲げ そして称える。

「おれ サッカーの事は詳しくないけど コンサが好きなんだよね」

それぞれに練習を始める選手たち それを眺めながら隊長は言う。
飲み過ぎたビールのせいか 照れくさいのか その顔は赤らんでいた。

「いや〜酔っぱらっちゃった もー前半は寝てたよ」

確かに前半は良くなかった。でもウソつけ 隊長の声は誰よりも響いていました。
しかも前半終了間際 トイレに走ったじゃないですか。だから飲みすぎですよ。

「おれ 涙もろくてさぁ すぐ泣いちゃうんだよね」

昨年11月 ドーム最終戦 試合終了の笛がなった時 隊長は号泣していた と聞く
私は近くにいたが それを知らなかった。知らないでよかった 見たら"もらった"だろう。
そして横浜FC戦 終了。 1−1の引き分け。後半は素晴らしい試合を見せてくれた。

「ちょっと声かけてくるよ」

ゴール裏 最前列まで行き 選手たちに労いの声を掛ける。私も後ろについて行った。
ひとしきり声を出し 振り返った隊長の目は真っ赤だった。

誰よりも熱く 誰よりも暖かく コンサドーレを見守る人。おやじ隊長。
私はあなたを尊く思っています。その行動力に。その愛情に。
そして あなたには あなたを支えてくれる仲間がたくさんいます。
それを どうか心強く思って下さい。


「せっかく こうやって 人の輪が出来たんだから なんか形にしたくてさ…」

僅かな縁がふれ合って 繋がろうとしています。いや 繋げようとした人がいます。
どうか皆さん 力み過ぎず 茶化さず このおやじさんと一緒に頑張ってみましょうよ。

「年に1回か2回 札幌とかで みんな一緒に飲めればさ それでいいんだ それだけで」

それでイイと思う。そう大げさな理由なんかなくたって。形になることが大事。
だから私も 力まず出来ることだけで 協力しようと思ってます。無理はせずに。
それでも いつか全員一緒に応援して 声出して ボロボロに泣きたいね。
その時は思いっきり"もらい"ますよ。 いつの日か。 必ず。

どうか よろしく。 おやじ隊長。
祝 設立。"袖ふれあうも☆コンサの縁"。


   気が狂いそう やさしい歌が好きで
   ああ あなたにも 聞かせたい 
   〜
   叫ばなければ やりきれない思いを
   大切に 捨てないで
   〜
   僕が言ってやる 大きな声で 言ってやる
   聞こえてほしい あなたにも
   
   ガンバレ!

"袖☆コン"テーマソング「人にやさしく」


NO.12  ビール 冷えてます。2004.6.27
我が家の冷蔵庫に3本の瓶ビールが冷えてます もうキンキンに。
その名も「湘南ビール」 湘南 茅ヶ崎生まれの地ビール。
4月の末 友人がお土産で持ってきてくれたんです。
サザン好き我ら夫婦を思って わざわざ重い荷物になりながら 持って来てくれました
私が酒飲めないの知ってる友人ですから 実質 カミさんへのお土産だったわけです
で この ありがた〜い「湘南ビール」いつ飲むか そのタイミングが難しかったのです。

普通なら その友人と一緒に飲むとか すぐに飲むとかなんでしょうけど
ちょっと そこら辺のタイミングを逃してしまって いつ飲むんだろう って思ってたら
何を決意したのか カミさん

「コンサが勝ったら飲む!」

そんな事をノタマイました。ま それを聞いた時は 私も
「それも 悪くないねぇ」 ぐらいに 思ってはいたのですが…

勝てねぇ ぜんっぜん 勝ってくれねぇ。

いや私はイイんですよ どーせ飲めないし 楽しみにしてたわけじゃないし
ただね 重いのにせっかく持ってきてくれた友人に悪いし カミさんの我慢も限界に近い
なんせ 当のビールはもうイイだけ冷えてるし この暑い6月末
とうとうカミさんが言いました

「今日 飲む」

そうですか その日が来ましたか 大森復帰 桑原デビュー記念 と言うことで
それもイイでしょう ただね 何も13連敗した今日 飲むことないでしょうに。

で 晩メシどき ニヤニヤしながら カミさんが冷蔵庫から「湘南ビール」を
取り出してきます が その時 「あっ!」と言う声が…

賞味期限:04/05 23 って1ヶ月 過ぎてるし。

その時の カミさんショックな表情 そらもう 気の毒で…。
ただね「勝ったら飲む」誓いを破ったのですから そう言う仕打ちもありますよ
やっぱ お天道さまは 見てるんですねぇ。


コンサドーレ選手諸君 君らの連敗は 思いがけない所に影を落としてるようです
「勝ったら○○する」 そんな誓いを立ててるのはカミさんだけじゃないでしょう
きっと日本全国に そんな悲しい物語はたくさんあるはずです
どーか そんなお気の毒な方たちの想いをひっくるめて 頑張ってください。

ちなみに この私 冷蔵庫に4本の
「青森産 リンゴジュース ストレート果汁100%」 イイ感じで寝かせてあります
しかし 「勝ったら飲む」 の誓いを破り 今日1本 空けました。

賞味期限:04 11 06まで。  残り3本 大丈夫だよな。


NO.13 北の国から 04 絆 6月27日 2004.6.27

結 「ほら〜純! 早く〜!支度出来た〜?!急いで!もぉ!!」

バタバタと忙しく駆け回る結の足 咲太に小さなリュックを背負わせる
純 ソファに座りタバコの灰をポロリと落とし慌てる 髪はボサボサのまま

"月に2度 その出来事がある土曜の朝は いつもこんな調子だ…
半年前 れいちゃんと偶然に会い 生まれて初めてサッカーの試合を見に行った
そして約束通り次の試合 僕は結と咲太をドームへ連れて行った
Rンバさん達は大喜びで僕らを迎え入れてくれ 
結とれいちゃんはあっという間に仲良くなっていた 
その光景は 僕ら男側から見たら 少し不思議なもので・・・
何より驚いたのは 結の熱狂ぶりだった 元々の性格がサッカーに合っていたのか
ゴール裏で叫ぶ彼女の姿は 何の違和感もなかった

そう あれから半年 試合のある 土曜の朝は いつもこうだった…"

北の国から 04 絆 ――――――――

結 「咲ちゃん 靴 履こうねぇ ほらぁ!純!急いでったら〜!遅れるっしょやぁ!」
純 おにぎりを頬張りながら玄関へ来る 大きな赤いリュックに小さな旗が差してある
慌てながら 靴を履こうとするが ひもが絡まる ようやく玄関を出る
結 「あっ!純 ビデオ!録画!した? 急いで!」

"ったくよぉ 自分でやれよ それぐらいっ!って言いたいけど 言えません!"

大慌てでビデオ録画をし 鍵を掛け部屋を出る純 1階の郵便受けに数通入っていたが
そのままにして外へ出る 結と咲太はもうずっと先に歩いている
郵便物の中の1通 "笠松 蛍 より"の文字

純 「なぁ まだ8時半だぜ 試合まで5時間以上もあるって 早過ぎない?」
結 「分かってないなぁ純は 戦いはもう始まってんの!負けられないの!はい急いで!」
純 「いや…だから… 早く行くってことと 負けられないってことが…いまいち分か…」
結 「い〜い純?今コンサは最下位なの!若手だけで大変な時なの!
だから頑張んなきゃならないの!」
純 「あぁ…はい…そう ですか…」

"何なのだろう 結のこの入れ込みようは…すっかり筋金入りのサポーターだ
 
ただ彼女がこうして何かに打ち込み 張り切る姿を見ていると 僕は嬉しくなる
 試合に負けると誰よりも悔しがり 点を決めると泣くほどに喜ぶ
 一緒に泣き 一緒に笑い合う仲間も出来 いきいきとする結
 ほんとうに 彼女を試合に連れてきて良かったと思う つくづく そう思う"

厚別競技場横 試合を待つ人の群 その中 会長・おやじさん・れい・Rンバ 皆がいる
結 「おぃ〜すっ!」 純「こんちわ」ペコりと挨拶
Rバ「ち〜す」 おやじさん「遅いぞ〜ユイちゃん〜」 れい「おはよ〜」

"おやじさんを筆頭に皆早過ぎる しかもすでに宴会だ
 今日は家に帰ってから反省会が開かれるだろう 次はもっと早く出るぞ!とか…"

おやじ「なぁ純君 今日は勝てるよな な 頼むよ もう勝ってくれよ」
結 「何言ってんのおやじさん!勝たせるの!ね!絶対負けさせないから!」

"このパワーには誰も勝てない おやじさんも ただただうなずくしかなかった"

試合開始 序盤コンサの両サイドが機能し 良い攻撃を見せる 惜しいシュートもあった
しかし序々に相手ペースになり始め 中盤・最終ラインが下がり気味になる
前半38分 相手CK ファーサイドの折り返しを中央で決められ失点

結 「あ〜 もう何やってんの!向こうフリーだったべさ!もう!頑張れ〜!」
会場「コ〜ンサ ド〜レ! コ〜ンサ ド〜レ!」

後半 自陣深く左サイドで奪ったボールを砂川へ渡す 権藤がドリブルで上がり
右の岡田へ クロスは一旦GKは弾かれるも 砂川が拾いそのままミドルシュート!同点
Rバ「やった!!」 結「キャー!スナ〜!やった〜!やった〜!ど〜てん!!」

その後も惜しいチャンスは何度かあったが1−1のまま試合終了

結 「う〜ん 惜しいなぁ もうちょっとなんだけどなぁ まいっか勝ち点1ゲット!」
純 「だな」
Rバ「次 次っすよ!ね おやじさん」
おやじ「ん〜〜〜〜だっ」
皆 帰り支度をし競技場を後にする ユニフォーム・赤い鞄 地下鉄大谷地駅へ向う人の波 

れい「それじゃ 結ちゃん またね 次ね」 れい ガッツポーズ
純・結「それじゃ また」 結 ガッツポーズ

"結とれいちゃんは顔を見合わせるといつもガッツポーズとる
 その意味は未だ分からない 気合のサインなのだろうか? 今度聞いてみようと思う"


純・結・咲太 アパートの1階 郵便受けから数通の郵便を取り出す純
その1通 見覚えのある文字 裏を見る 
"笠松 蛍 より"
結と咲太はエレベーターのドアを開け 純を待っている 咲太の手にはミニフラッグ

結 「純〜 ど〜したの?先に部屋行ってるよ〜」
純 「あぁ いいよ…」
不思議そうな顔で手紙を開ける純 中から2枚の便箋が出てくる 僅かな不安


"おにいちゃん 結さん 咲ちゃん お元気でしたか
 蛍たちはあいも変わらず元気で過ごしております
 咲ちゃんも2歳になって 見が離せない時期なんでしょうね
 我が家の快も 元気 というか もう困ったほどのやんちゃに育ってます

 ところで今回手紙を書いたのは ちょっと報告があるのです
 電話で話そうか どうしようか迷ったのですが たまには手紙もいいかなって思って…

 報告 正ちゃんと 快と 蛍は 富良野に帰ります。

 驚いた? 急な話でこちらも戸惑っていますが 来月には引っ越します
 先月 中畑のおじちゃんから連絡が来て 仕事を手伝ってくれないかという話でした 何でも
娘婿さんが旭川で新しい会社を起こしたらしく そこで働かないかと言うことで
 正ちゃん 始めは牧場の件のこともあって あまり乗り気にはなれなかったようでした
 そうしたら その娘婿さん わざわざこっちまで来て「正吉さんの力が必要だって」
 正ちゃん そう言う熱いのに弱いから… それと何か思う事があるようで
そんなこんなで 決心したのです
丁度こちらの仕事も一区切りついた事もあって 来月の引越しになりました
しばらくは富良野から通い 父さんの家で一緒に暮らします

蛍は今から皆に会えるのを ワクワクしています
咲ちゃんはどんな顔をしてるんだろう とか 父さんは老けたのかな とか
おにいちゃん相変わらずだろうな とか。

それでは 来月。結さんにもよろしくお伝え下さい。
                                  蛍 より"


"え〜〜帰ってくんのかよ そうか〜 帰ってくんだ〜"

結 「どうしたの?純 何かニヤケてない〜?」
純 「う〜ん 蛍たちがな 帰って くるんだって」
結 「ほんと〜!いつ?どこに住むの?ね?」
純 「来月だって 富良野に住むって 父さんのところ」
結 「きっとお父さん喜ぶね じゃさぁ これからは直々会えるね〜」

"正吉と会うのは何年ぶりだろう 4年 いや5年も経っていた
 お互い傷つき ボロボロになり あてもなく富良野の地を離れた
 あれから俺たちは成長したのだろうか? 人として 男として何かを成しただろうか?
 俺は正吉の前に堂々と立てるのだろうか?この数年間 いつも正吉が僕の心の中にいた
兄弟のように育ち 親友であり 弟でもあり 男として尊敬している 正吉
僕は おまえと会うことを 少し戸惑い そして 思い切り待ち望んでいる"



〜1ヶ月後〜
富良野 五郎の家  時計の音 ボーンボーンボーン…
純 ぼんやりと時計を見る 五郎 胡座をかきウトウトとする 眼鏡がずり落ちる
ガラッ 玄関の扉が開き 勢いよく結が入ってくる

結 「来た!来たよ!正ちゃんの車!」

純・結 外へ出る 車が近づく 後部座席にはたくさんの荷物が積んである
正吉 蛍 快 3人の顔が見える 純のすぐ前で車が止まる ドアが開く

正吉「オス…」
純 「よぉ…」
向こうのドアから蛍と快が降りる 結が迎える
純 「…元気 だったのか…?」
正吉「あぁ元気 元気 でしたよ… お・兄・さ・ん」
純 「……んなぁろ! な〜にが お・兄・さ・ん だ!」 2人 笑う
正吉「父さんは?」
純 「 な・か 」 家の中を指差す
結 「嬉しくて仕方ないみたいですよ」 笑う

蛍 「ただいまっ!父さん!」
五郎「おお おかえり で 快は? 快は どぅした?」
純 「ここにいるよ〜 ほら快 じいちゃんだよ〜」
五郎「おおぉ 快ぃ〜 元気だったかい〜 こっちおいで」
五郎 快を抱き寄せ体中を撫ぜる 快 少し迷惑そうな顔 大きな荷物を抱え正吉が入る

正吉「…父さん たいへん ご無沙汰してました…」 深々と頭を下げる
五郎「おぉ正吉 元気そうで…いやぁ なぁんもだ よく来た ん おかえり うん」

"それから皆で夕食を食べた 父さんは誰よりもはしゃぎ 僕らは笑い疲れた
 いつ以来だろう 皆が揃ったのは いや 今は快や咲太までいる
それは 初めてのことだった
母さんの写真が いつもより優しく微笑んでいるように思えた

父さん 3人で暮らし始めたこの富良野に 今は7人が揃いました
父さんが根を張った木は すくすくと枝葉を伸ばし 大木になろうとしています"

正吉 純にビールを注ぐ
正吉「なぁ純 仕事 どうだ? 札幌でちゃんと暮らしてるのか?」
純 「うん…まぁ ボチボチとな それより結がさ コンサ コンサってタイヘンよぉ」
正吉「コンサって? …札幌のサッカーチームのか?」
純 「そう 知ってる?J2で最下位だぜ 最下位 でも応援は熱いんだぁ」
正吉「そっか〜 結ちゃん応援してんのか いや俺もサッカー好きでさ 向こうでも
   時々試合見に行ってたんだ 今度 一緒に連れてってくれよ 兄さん」
純 「だから その"兄さん"ってのやめれって 痒くなんの!」
正吉「なぁ結ちゃん 今度コンサドーレ連れてってよ」
結 「えっ!正吉さんコンサに興味あります?ほんとほんと!じゃ選手教えてあげ…」
純 正吉の頭を抱え引き寄せる 2人低くなり 小声で話す
純 「…ばかっ 結にコンサの話させたら 止まらんぞ…」
正吉「ま まじ かよ・・・」

"それから2時間 結の演説は止まらなかった・・・
父さんは酔っ払って寝てしまい 快も咲太も その横でぐっすり眠っていた
よせばいいのに蛍まで行きたいと言い出し 結局翌週の試合皆で見に行く事を約束した
やはり 結の熱さは 伝染するようだ"

純 「じゃ そろそろ帰るわ 父さん起こさなくていいから それじゃ」
結 「それじゃ 正吉さん 蛍さん 来週ね」
正吉「うん 来週 それじゃ 気をつけて に・い・さ・ん」
純 「だ〜か〜ら〜 … おやすみ」

翌週 厚別競技場 朝7時半 仲間との集合場所に着いた純一家 蛍一家
正吉「笠松正吉です 純の義弟です」 蛍「蛍です 妹です 息子の快です」
れい「ほ た る ちゃん?蛍ちゃんだよねぇ れいです 覚えてる? わぁ懐かしい〜」
Rバ「おぉ また仲間が増えた〜 嬉しいっす Rンバです よろしく」
正吉「こちらこそです」

蛍 「ちょ ちょっとお兄ちゃん 何でれいちゃんがいるの?結さん大丈夫なの?」
純 「うん まぁ話せば長くなるけど まぁ見ろよあれ あんな感じ 大の仲良し」
蛍 「…ふ〜ん 不思議だねぇ…」
純 「不思議だよなぁ…」

"この試合もコンサドーレは勝てず 結局最下位を脱出することは出来なかった"

結 「あ〜残念 また勝てなかった」
蛍 「でも最後惜しかったよねぇー もうちょっとだったのにねぇー
けど結さんがハマるの分かる すんごくおもしろかった〜 また来よう〜」
正吉「ほんと ほんと ゴール裏 すんごいわ 俺 鳥肌立ったもん また来よう」
純 「だろ〜」 れい・結「でしょ〜」


"その夜 蛍たちは我が家へ泊まることになった 結は忙しく夕食を作りながらも
 コンサドーレの話は止まらなかった 蛍も負けずに語っていた
 どうなってるんだか… 僕の周りの女性陣は…"

夕食の終えたテーブル 純と正吉 子供と母たちは奥で遊んでいる

正吉「なぁ純 俺な ほんとは ずっと帰ってくる 理由を 探してたんだ」
"突然 正吉が真剣な顔で そう言い出した"

正吉「おやじさんの事 ひとりにさせたくなかったし 蛍や快にも近くに居させたかった
   それにな 俺たち皆バラバラに暮らしてるだろ それじゃダメなんじゃないかって
家族なんだから もっと結び合って暮らさないと ってな…」

"ちょっとドキッとした いや それはショックに近かった
 それは僕自身ずっと心に思っていたこと 僕がやらなければ ならなかったこと
それを正吉は行動に移した"

正吉「俺は 黒板の人間だと思ってる だから何とかしたかったんだ…出しゃばったか?」
純 黙って首を横に振り ぼんやりとグラスの淵を指で辿る

"父さんや蛍の嬉しそうな顔を見れば その行動が正しかったのがよく分かる
 ありがとう 正吉 おまえの行動が 僕らを また家族にさせてくれた
 目に見えない 細くなった糸を 繋いでくれた
 ほんとに ほんとに ありがとう 正吉…"

正吉「何だよ 何か言えよ なぁ純」
純 「……うん 何か おまえらしいなぁ…と思って…」
正吉「そっか…俺らしいってかぁ…分かんねぇけど そっか…」
純 「………ありが…と… 」
章吉「ん?何?今 なんて言った?」
純 「な〜んでも ねぇ〜よ」


"父さんがしっかりと握って離さなかったもの
どんなに遠く離れようと 繋いでいてくれたもの
今回 正吉の決意に 結のたくましさに それを教えられました

父さん 今度は 僕が それを持っていいですか? まだ頼りないですか?
今 僕の中に芽生えた 小さな決意を いつの日か 父さんに負けないくらい
大きな木に育てたいと そう誓っています

形にない 不確かなもの でも大切な 僕らを結ぶ 絆を。

父さん 今度 一緒に サッカー 行きませんか?
興味ないかもしれませんが 結がきっと喜びます きっと すごく喜びます
正吉と一緒に来てください 待っています"


富良野 初夏 とうきび畑の中を走る 快 追いかける 五郎
青々と澄んだ空 微かにセミの声

「北の国から 04 絆」 完



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